MTV Unpluggedの歴史の中では、それほど有名ではないPaul McCartneyの"Unplugged"ではあるが、Paulのライヴ版音源の中でも、演奏陣も豊かで、かなりクオリティが高く、PaulやThe Beatlesのファンであれば、このアルバムは気に入るアルバムだろうと思う。The Beatlesの楽曲、Paulのソロ作品、おまけとして、Paulが14歳の時に書いた"I Lost My Little Girl"。それに加え、彼のルーツとなっているスタンダードナンバーやGene Vincent、Elvis Presleyといったロカビリー、そしてBill Withersの"Ain't No Sunshine"等、Paul自身が心から楽しめるような選曲であるように思う。
"Be-Bop-A-Lula"や"Blue Moon of Kentucky"を聴いていると、本当にPaulとロックンロールは似合っているよなと改めて思ってしまう。ポップスターとして、常に先端的でスタイリッシュな音楽の創造を模索する彼ではあるが、結局はロックンロールがホームであり、一番落ち着く場所なのだろうなと思う。
"Here, There and Everywhere"、"Every Night"、"And I Love Her"、"Blackbird"等、Paulお得意のアコースティックな楽曲に関しては、言うまでもなく素晴らしい演奏を見せている。正直に言うともっと沢山聴きたい位だ。"Blackbird"のMCではPaulお得意の寒いジョークを繰り返し、聴衆をドン引きさせているけれど、そこもまた彼の魅力の一つであって、憎めない部分。
アルバム全体を通してリラックスし、メンバー全員で音楽を楽しんでいる状況が伝わってくる。様々な辛い状況を何度も乗り越えてきた彼が、こうして楽しみながら音楽を演っているライヴというのは、聴いているこちらまでハッピーな気分にさせられる。個人的には、こういった企画やイベントにどんどん参加して、彼自身心から楽しみながら演奏するライヴをもっと見たいというのが、僕の願いだ。