VINCE NEIL『CARVED IN STONE』(1995): TMQ-WEB

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2018年2月11日 (日)

VINCE NEIL『CARVED IN STONE』(1995)

1995年9月に発表された、ヴィンス・ニール通算2作目のソロアルバム。MOTLEY CRUEをクビになったあとにリリースした初ソロ作『EXPOSED』(1993年)は、モトリー時代の良質かつ“ファンが求める”部分を煮詰めたかのような、かなり優れたハードロックアルバムでした。スティーヴ・スティーヴンスという華のある凄腕ギタリストが参加したことも、成功の大きな要因だったでしょう。

しかし、同作を携えたツアー終了後にスティーヴは脱退。新たにブレント・ウッズを迎えて再度ツアーに出るも、今度はもうひとりのギタリストであるデイヴ・マーシャルも脱退してしまいます。そういった苦境の中、制作されたのが本作『CURVED IN STONE』です。

本作ではプロデューサーにTHE DUST BROTHERS(BEASTIE BOYSベックのプロデュースでおなじみの2人組ユニット)を迎えて制作。HR/HM畑以外の人と組むことがファンに不安要素となりましたが、その不安は見事的中。ポジティブな空気に満ち溢れていた前作とは相反し、ダークなテイストで統一された異色作に仕上げられています。

ヒップホップを得意とするプロデュースチームだけに、サンプリングを駆使した「Breakin' In The Gun」からスタートする本作に、きっとHR/HMファンなら誰もが動揺するはず。そこから“グランジ以降”のダークかつグルーヴィーな「The Crawl」や「Black Promises」「Writing On The Wall」のような曲が続くのですから、モトリーの『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)『DR. FEELGOOD』(1989年)路線を求めるリスナーは拒絶反応を起こすのも仕方ありません。

本家モトリーが『MOTLEY CRUE』(1994年)というダークな作品で業業的に失敗したにも関わらず、ヴィンスも同じ過ちを犯す……いや、ヴィンス的には「時代の最先端に乗れてる? 俺、イケてる?」と思ってのことだったのかもしれません。とはいえ、BLACK SABBATHのヴィンス流解釈と受け取れる「Make U Feel」、“テクニカルなグランジ”と受け取れば納得のいく「One Less Mouth To Feed」、泣きのヘヴィバラード「The Rift」など、意外と良い曲が多いのも本作の特徴。『EXPOSED』と比較してしまうからダメなのであって、1枚の「ダークなハードロックアルバム」として受け取ればそこまで悪くはないんですけどね。あ、そうなると序盤に含まれているヒップホップテイストの「Breakin' In The Gun」や「One Way」、陽気なイギー・ポップのカバー「Lust For Life」は邪魔になりますが(苦笑)。

ちなみに本作、日本盤と海外盤とでは収録曲順が一部異なるようです。日本盤初出時にアルバム中盤に「Lust For Life」、ラストにCHICAGOのカバー「25 Or 6 To 4」が含まれており、「The Rift」の次に当時ガンに侵されていた(のちに逝去)愛娘スカイラーに捧げた美しいバラード「Skylar's Song」が収録されていました(このへんの事情も本作のダークな作風に少なからず影響を与えているのでしょうか)。しかし、のちの海外盤では「Skylar's Song」が5曲目に入っていたり、中盤の曲順が一部異なっていたりして、日本盤に慣れた耳で聴くとちょっとチグハグな印象を受けます。SpotifyやAppleMusicなどは海外盤と同じ曲順なので、初めて聴く人は特にそのへん意識しなくても大丈夫かと(笑)。

あ、最後に。CHICAGOのカバー「25 Or 6 To 4」が非常に素晴らしい出来なので、ぜひこのへんのボーナストラックを何らかの形で正式再発してもらいたいところです。



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