「山口組の抗争を突撃取材」「本物のパトカーを110番」…『ふてほど』で話題の80年代映画がヤバすぎる(伊藤 彰彦) | +αオンライン | 講談社(1/2)
2024.04.19
# 芸人

「山口組の抗争を突撃取材」「本物のパトカーを110番」…『ふてほど』で話題の80年代映画がヤバすぎる

いま、1980年代が注目を集めている。TBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』は、1986年と2024年の時代差を描くことで80年代カルチャーの郷愁をくすぐり、令和の激しいコンプライアンスの息苦しさに対し疑問を呈して共感性を高め、SNSで話題沸騰となった。じつはその1980年代の10年間のみ、日本映画が配給収入で外国映画を大きく超えたことをご存じだろうか。

日本映画界に狂乱と退廃、新進気鋭の才気があふれ出した1980年代。そして『復活の日』『ヨコハマBJブルース』『ダブルベッド』『お葬式』『家族ゲーム』『コミック雑誌なんかいらない』など、80年代の話題作を手掛け邦画全盛期を築いた怪物プロデューサーが、岡田裕だ。『なぜ80年代映画は私たちを熱狂させたのか』(伊藤彰彦著)より抜粋して、80年代を象徴する映画『コミック雑誌なんかいらない』(プロデューサー:岡田裕 監督:滝田洋二郎)の裏側と当時の「時代感」をお届けする。

『なぜ80年代映画は私たちを熱狂させたのか』連載第5回

『80年代映画が自由すぎる…「ロス疑惑」の三浦和義に「内田裕也」が本当に直接取材する「常識外れのワンシーン」』より続く

本物のヤクザに突撃取材

——「ロス疑惑」での成田空港以降、突撃シーンは上手くいったんですか?

滝田 突撃シーンではキャメラを覗いている暇がないから、キャメラマンの志賀葉一さんが、横についている小さいモニターを見ながら撮影できる「ムービーカム」という最新式の小型キャメラを借りてきた。それを抱えて群衆に突っこみ、もう一台のキャメラで、誰が何をやっているかがわかるように引きの画を押さえたんです。

「マスコミを批判できないな。自分も残酷だな」と思ったのは、抗争の渦中の山口組と一和会に裕也さんにインタビューに行かせるシーンです。僕はひそかに裕也さんがやくざに殴られることを期待し、というか明らかにそれを狙っていた。「てめえ、ぶっ殺すゾ!」と叫ぶやくざに近づく裕也さんのシャツの背中が汗でびっしょり濡れていました。

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裕也さんがやくざに殴られた瞬間、僕が「カット!カット!」と大声で叫んで、踵を返す。やくざが撮影が終わったと思いこんだあとも、キャメラを回せと志賀さんに言っておいた。

残念なことに、殴られる前に裕也さんが「以上、キナメリがお伝えしました」と逃げちゃった。

このあと、神戸の田岡邸の前で「ただいま山口組の本家前から中継しております」と話す裕也さんを撮影していたら、門の中から親分クラスの貫禄のやくざが飛び出し、裕也さんに向かってきた。何かあるぞと期待してキャメラを回していると、その親分が「裕也じゃねえか。元気か!」。裕也さんの幼馴染みだったんです。裕也さんは田岡三代目の堅気の長男の満さんともポン友(友達)だと知りました。