まったく疲労を感じることなく、1日を過ごせたらそれだけで最高! でも、実際には10代そして成人の30~40%が、日中に眠気や疲労感を経験しているのだそう。

眠気や疲労感を感じる要因はさまざま。睡眠、食事、運動量、免疫力、その他の身体機能や日々の習慣などすべてが影響し、「眠い」「だるい」「疲れている」といった症状に繋がっているのだとか。

そこで専門家が解説する眠気や疲労感の原因を<グッド・ハウスキーピング>からご紹介。「シャキッとしない」「慢性疲労が取れない」、どうにもならなかった悩みの理由をぜひ探ってみて。


【INDEX】


睡眠不足

アメリカ疾病予防管理センターによると、アメリカ在住の成人のうち3人に1人は十分な睡眠をとっていないとのこと。つまり、日常的に感じる疲労感や眠気の理由は、「単なる睡眠不足」という可能性も。

ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院で、栄養およびライフスタイル精神医学部長を務めるウマ・ナイドゥー医師によれば、「必要な睡眠時間は人によって大きく異なるもの」とのこと。

多くの成人は、最低でも7時間の睡眠が必要なものの、健康状態によってはより長時間の睡眠を必要とする場合も。また、数日睡眠不足が続いただけでも、慢性疲労に繋がる可能性もあるのだとか。

「普段の睡眠スケジュール(就寝・起床時間、睡眠時間など)を確認した上で、最近変化したことはないか? どのぐらいの期間、眠気や疲労感が持続しているのか? といったことを把握することが大切です」
quality sleep
TatianaMagoyan

睡眠の質が低い

「睡眠を7時間とったとしても、それが必ずしも質の良い睡眠とは限りません」と話すのはナイドゥー医師。

「『しっかり眠ったにもかかわらず、起床時から倦怠感を感じます』と訴える患者さんは多いのですが、これは睡眠の質が関係しているのです」

アメリカ国立衛生研究所によると、質の良い睡眠をとると、脳は5段階ある睡眠サイクルのすべてを通過するそう。記憶を保存するだけでなくホルモンを放出し、翌日から体内エネルギーレベルを調節することができるようになるとのだとか。

けれど、「頻尿体質であったりカフェインの摂取過多による覚醒など、さまざまな理由で夜中に目が覚めてしまい、睡眠周期が妨げられるのはよくあることです」とナイドゥー医師は指摘。

「健康的な睡眠習慣」は、多くの場合は質の高い睡眠につながるもの。「就寝前は食事や間食を控える」「睡眠環境をできるだけ心地よいものにする」などに加え、「(週末を含め)決まった時間に就寝する」ことで質の高い睡眠を誘発することができる可能性も。

学術誌『International Journal of Psychology』で発表された「思春期世代を対象にした睡眠研究(2016年)」によると、週末の就寝時間がバラバラな若者に比べ、毎晩同じ時間に就寝する若者は疲労度が低く、睡眠導入の問題も少ないことが判明したとのこと。

糖質の摂りすぎ

「食べ物と睡眠」は密接な関係があるそう。精製・加工された炭水化物食品を摂りすぎている場合、1日中倦怠感を引きずる可能性があるので要注意。「血糖値のバランスはエネルギーレベルに大きな影響を与えるもの。

ですが、同じ炭水化物といっても種類はさまざまです。砂糖や白パンや白パスタなど精製された“白い”炭水化物を大量に摂取すると、血糖値は急上昇します。そしてその後、倦怠感が襲ってきます」と語るのは、グッド・ハウスキーピング研究所の登録栄養士であるステファニ・サソスさん。

「体は必要以上の糖分を摂取したと認識すると、インスリンが急速に生成します。その結果、血糖値が急激に低下し『シュガークラッシュ』と呼ばれる低血糖症状態になることがあるのです。こうした血糖値の急激な変動は、疲労、不安感、イライラの原因にもなりえます」

つまり、慢性的な疲労感は食事と関連していることも多く、食事を見直すことで、眠気や倦怠感を解消できる可能性もあるとのこと。サソスさんの提案は間食の見直し。デザート、キャンディ、ソーダ水、ジュースには精製された炭水化物や糖質がたっぷり入っている食品の代表例。

「(こうした砂糖たっぷりの食品ではなく)繊維質を多く含む食品を選びましょう。たとえば、新鮮な野菜や全粒穀物、豆類などがおすすめです」
「繊維質は体内の糖の吸収を遅らせ、血糖値を改善し、血糖値とインスリンの急激な生成を回避するのに役立ちます。また、炭水化物をタンパク質や健康的な脂肪と組み合わせることで、血糖値の安定に貢献します。たとえば、リンゴはそのまま食べるのではなく、大さじ2杯の天然ピーナッツバターと組み合わせると、体内へ糖質が放出される速度を遅らせることができるのです」

運動不足

1日中座りっぱなしの生活をしている人が多い現代人。「エネルギーを消耗していないから、元気を維持できる」と思っているなら大間違い! サソスさんによると(座っている時間が長い)仕事の前後で汗をかく時間を作らないと、かえって疲労が増すのだとか。

「定期的に運動すると血行が良くなり、筋肉組織に酸素や栄養素を効率的に届けることができるようになります。これによりエネルギーレベルが上昇し、疲労レベルを徐々に下げてくれるのです」

エネルギー上昇だけでなく、運動は睡眠を助ける効果もあるのだとか。「日中に運動量が不足すると、体の自然な概日リズムが混乱するものなのです」と説明するのは、デューク大学・精神医学・行動科学部門の臨床心理学者であるジェイド・ウー博士

自身がMCを務めるポッドキャスト番組<The Savvy Psychologist>でも「体が『現在は昼間である』と感知する『手がかり』がないため、エネルギー消費量が増加しないのです」と解説。

日中に汗をかくような運動をすることでエネルギーがしっかり放出され、夜眠りにつきやすくなることに繋がるのだそう。

栄養が偏っている

too many lights
Danielle Daly

慢性的な疲労感に悩んでいる人の場合、タンパク質不足や貧血などに伴う栄養不足の可能性も。多くの場合、バランスの取れた食事で栄養を補うことはできるものの、ナイドゥー医師によると(特にアンバランスな食生活でなくても)体内の栄養素が欠乏してしまう体質の人もいるのこと。

鉄、マグネシウム、ビタミンB、ビタミンDはエネルギーレベルに大きな役割を果たす栄養素。鉄欠乏性貧血はアメリカ人女性の2%未満に見られる症状であり、6%近くの女性には鉄欠乏症状が見られるのだとか。こうした症状はサプリメントで補えることも多いので、まずは医師と相談することが大切。

また、「疲労感はホルモンバランスに関連している可能性もあります。血球数が少ないと疲労感を引き起こしますが、ホルモンのバランスの乱れも疲労の原因になるのです」と、ナイドゥー医師。

「血液検査を受けることで、甲状腺疾患が見つかることも。甲状腺ホルモンの不均衡は、疲労感や強い眠気(長時間睡眠)の症状が見られることもあります」

不眠症の可能性も

約4人に1人の女性が不眠と思われる症状を一度は経験しており、多くの場合が長年に渡りその症状に悩まされてしまうのだそう。

不眠症の典型的な症状には「睡眠導入が困難」や「長く睡眠が持続しない」などがあり、そのいずれか、もしくは両方を抱えてしまう人も多いよう。「治療には、行動/心理的援助が必要です。これは患者の睡眠および睡眠導入のメカニズムを学び、解決策を探す治療法です」とウー博士は解説。

就寝時間を守るなど、眠るための時間をきちんととっているにも関わらず、一晩中眠ることができない―― そんな症状が見られる場合は、一度医師に相談してみるといいかも。

アレルギー

ミシガン・アレルギー・喘息・免疫学センターでアレルギー免疫学を専門するキャスリーン・ダス医師によると、季節性アレルギーのある人(子どもを含む)のほぼ80%が「(日中と比較し)夜間の方が症状がひどくなる」と報告されており、特に呼吸障害や皮膚のアレルギーを持つ人に、睡眠困難の症状が多くみられるそう。

「マスト細胞と呼ばれるアレルギー細胞は独自の概日リズムを持っており、夜にもっとも活発に活動する特徴があります。季節性または通年性のアレルギーを持つ人々の多くが、就寝時に鼻水・鼻づまりを経験するのはこれが理由なのです」

ダス医師の患者の多くは、睡眠不足を補填するために無意識のうちに(日中)昼寝をするようになるのだとか。

また、アレルギーが原因の場合は対策を講じることも可能とのこと。

「たとえばダニ・アレルギーがある場合は寝室に動物を入れないようにして、マットレスや枕をダニ防止カバーで覆うことで症状を軽減できます。加えて、花粉症は早朝や夕方に悪化する傾向があるので、この時間帯は窓を閉めたままにしておくと睡眠が改善するかもしれません」

基本的なことですが、アレルギー専門医の診察は必須。睡眠環境を整えたり、高性能な「HEPAフィルター」を使用した空気清浄機を使うなど、睡眠不足によるストレスを緩和できる適切なアドバイスをもらえるはず。「鼻づまり用の抗ヒスタミン薬(点鼻薬)など、特定の症状に効果的な薬の処方もあるので相談してみましょう」とダス医師。

電気を点けっぱなしで寝ている(または日照不足)

光(照明)は睡眠に大きな影響を与えるもの。就寝時に「明るすぎない環境」であることは大切ですが、気をつけるべきはそれだけではないそう。

レンセラー工科大学・照明研究センターのディレクターおよび教授(建築学)であるマリアナ・フィゲイロ博士は、光と睡眠の関係について幅広い研究を行ってきた研究者。

彼女の研究は「1日の特定の時間に特定の色の光にさらされると、人間のエネルギーレベルが影響を受ける」と結論づけており、「光はエネルギーを増やすと同時に、眠気を減らします。つまりコーヒーのようなものなのです」と解説。

「(光にさらされることで)脳の活動が活発になると、眠気が減り、エネルギーレベルとバイタリティーが高まります。人間は(一般的には)日中に活動する動物です。注意力を維持するために、日中は高レベルの光を必要としています。 私たちの脳は、日中に明るい光を“見る(=必要とする)”ように作られているのです」

日中、常に暗い場所で仕事をしていると、逆に不必要に眠くなったりすることがあるそう。しかし、この状態に慣れている場合、寝室が暗くても睡眠導入に繋がらなくなってしまうのだとか。

フィゲイロ博士は2017年に学術誌『Sleep Health』で発表した論文の中で「日中、(高度なレベルでの)日光にさらされている場合、体内時計と実際の時間との同期化が促進します。よって、夜にぐっすりと眠ることがでるのです」と解説。

「適切な時間(特に午前中)に光をしっかり浴びず、本来は光にさらされるべきでない時間(夜間)に光に浴びると、体内時計がずれてしまいます。適切なタイミングで光を浴びることが大切です」
too many lights
Danielle Daly

朝起床したら自然光を浴びる時間を増やし、目がよく覚めるようにすることが重要。 犬の散歩やウォーキングなどが効果的なんだとか。遅くとも就寝2時間前からはできるだけ室内の照明を暗くし、体が睡眠に向けての準備ができるようにすると良いそう。

また、電子機器から発せられる光が「自然な眠気」を打ち消す可能性もあるため、可能な限り電子機器を寝室に持ち込まないようにするのもポイント。少なくとも、ベッドから届く場所には置かないように気をつけて。

メンタルヘルス上の問題があるかも

「『眠気や疲労に悩んでいる』と訴える患者が、いつも睡眠不足かというとそうではないんです。うつ病全般性不安障害は、慢性的な倦怠感の主要な原因です」とウー博士は説明。

「うつ病の場合、体は機能を“シャットダウン”してしまいます。 また不安障害の場合は体が慢性的に緊張し、常にこわばっている状態。ストレスがたまり疲れ果ててしまいうのも当然です」

「たくさんの種類の認知行動療法がありますが、エネルギーレベルの上昇に効果を発揮するものも多いのです」と語るのは、認定臨床心理ソーシャルワーカーであるローラ・ミューラーさん。

「メンタルヘルスの観点では、双極性障害や心的外傷後ストレスなど、睡眠に影響を与える慢性的な状態があるのかどうかも確認することが大切です」

もし思い当たる特定の原因がない場合、まずは日常の行動スケジュールを見直し、生活面に原因がないか探ってみて。また、この数カ月に大きなストレスを感じていないかも。

「多くのケースでは、メンタル面での既往症(これまでにかかった病気)がなくても強いストレスを感じているだけで、エネルギーレベルが低下します。つまり、慢性的なストレスは疲労感の主要な原因と言えるでしょう」とウー博士。

「ストレスの原因は仕事、人現関係、経済状況、差別や偏見、社会情勢などさまざまです。体がそういったストレスと戦うために“戦闘モード”になることで、疲労感を引き起こしてしまうのです」

この翻訳は、抄訳です。

Translation: 宮田華子

GOOD HOUSEKEEPING