Sincere No.11 2019.1 page 6/24 | ActiBook

ブックタイトルSincere No.11 2019.1

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概要

Sincere No.11 2019.1

◆小児心臓血管外科医のみごとな技2018年9月7日、女子医大病院中央手術室の13番手術室で生後10か月の男の子の心臓手術が行われた。疾患名は心室中隔欠損症。左心室と右心室の間にある壁(心室中隔)に穴が空いているため、左心室から右心室へ血液が逆流して心不全や肺高血圧を引き起こすという疾患である。先天性心疾患の中で最も多く見られるタイプだ。手術は、この穴を“パッチ”と呼ばれる特殊な素材で塞ぐというものである。10時30分、新川武史准教授の執刀により手術開始。山岸正明客員教授(京都府立医科大学小児心臓血管外科教授)が助手を務めた。後述するように2人は師弟関係にあり、手術はまさに“あうんの呼吸”で流れるように進んでいく。まず、胸の真ん中にメスを入れ、皮膚と胸骨を切開。まだ赤ちゃんともいえる小さな子が対象だけに、そうしたアプローチも難しいのではないかと興味津々だったが、あっけにとられるほどスムーズに開胸され、心臓に到達した。心室中隔に空いた穴を塞ぐには、人工心肺装置を用いていったん心臓の拍動を停止させ、短時間でパッチを縫いつけなければならない。人工心肺装置作動後の11時10分、男の子の心臓の拍動が停止した。手術室に一気に緊張が走り、比較的おだやかだった室内の雰囲気がピーンと張りつめた空気に変わった。新川氏も山岸氏も神経を研ぎ澄まし、パッチを縫いつける指先の動きに集中する。縫いつけが終了したあとの11時35分、男の子の心臓の拍動が再開した。スタッフに安堵の表情が浮かび、手術室は大きな緊張感から解放された。パッチを縫いつけて心室中隔の穴を塞ぐのに要した時間は、正味約20分。狭い術野と小児の小さな心臓を考慮す山岸正明客員教授と新川武史准教授の師弟コンビによる小児先天性心疾患手術の模様。06 Sincere|No.11-2019東京女子医科大学病院の心臓血管外科は、先天性心疾患治療のリード役を果たし、心臓移植を究極とする重症心不全治療にも定評がある。さらに、細胞シートの移植によって心臓の機能を改善させる再生医療分野でもパイオニア的存在である。今号ではそれらの最前線をレポートする。医療最前線●心臓血管外科 2先天性心疾患・重症心不全・心筋再生治療でも最先端を走る