記録的な投票率の高さで、例年よりも白熱した今回のアメリカ大統領選。郵便投票と11月3日(現地時間)に一般投票が行われ、11月7日(現地時間)には バイデン氏の当選が確実となりました。本記事では、20・30代のZ世代とミレニアル世代に選挙前後の意見をインタビュー。アメリカ在住のライターが現地のリアルな声をお届けします。今回は、バイデン氏に投票をした人に、選挙前後に話を聞きました。


Jさん(白人男性・27歳・医師)

選挙前インタビュー

1. バイデン氏を支持する理由は?

個人的には政治で最も重要なのは、社会問題と環境問題。LGBTQ+の結婚や、人工中絶など、全員に平等な権利があることが大切です。

マウンテンバイクやスキーなどアウトドアが好きなので、個人的には環境問題の優先順位が高いのもあります。もし世界が現状のままで、私の子どもや孫がアウトドアを楽しめなくなるのは悲しいですよね。だからバイデン氏とハリス氏を支持しようと、すぐに思いました。

2. 前回の選挙はどちらに投票しましたか?その理由は?

ヒラリー・クリントン氏。上記とほとんど同じ理由です。ヒラリー氏の大ファンではないですが、彼女の社会問題と環境問題への考え方には共感できました。

3. アメリカ国民として、国や支持する候補者に何を求めますか?

相手を尊重できて、配慮のできる大統領がいいです。私が政策に同意できなかったとしても、せめて正しい方向に運んでほしい。アメリカは、もっと自分たちが主張している多様性を大切にするべきだと思います。

アメリカは「自分たちが最高だ」と思っています。本当にそうなのであれば、世界のお手本として、リードできるような存在、そして社会問題のリーダーであるべきです。

選挙後インタビュー

4. バイデン氏の当選が確実となったことについての感想はありますか?

楽しみです! まずはトランプ氏が大統領ではなくなることが嬉しいです。今回の選挙で前回は共和党が勝利したミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州、特にジョージア州が民主党に変わったのがすごいことだと思いました。

バイデン氏は失言はあるかもしれませんが、差別的な発言などはしなさそうだし、悪い人ではないと思っています。特に、環境問題に取り組んでくれること、そしてベテランの政治家なので、求めすぎかもしれませんが両党の協力を得ることにも期待しています。気になることとしては、移行期間とバイデン氏の年齢ですね。

Mさん(南アジア系女性・24歳・マネージメントコンサルタント)

選挙前インタビュー

1.バイデン氏を支持する理由は?

自分と価値観が近い民主党をサポートしています。私はフェミニストなので女性に選ぶ権利があると思っていますし、LGBTQ+の権利も信じています。そしてなにより、人種差別は社会的に許されないということ。また、手の届く妥当な値段の医療システム、気候変動、コロナ禍での科学者や公衆衛生の専門家の意見も重要だと考えています。

バイデン氏とハリス氏は基本的に、まともでいい人であると信じています。同じことををもう一方の候補者については言えませんね。

2. 前回の選挙はどちらに投票しましたか?

2016年の選挙では、ヒラリー氏に投票しました。彼女の価値観が私に合っていたし、彼女のことが好きだったのも投票した理由です。賢くて、有能で、適任だと感じていました。

3. アメリカ国民として、国や支持する候補者に何を求めますか?

アメリカは他者を尊重する国であると信じたいです。貧困層を根絶して、医療システムを多くの人が手が届くようにし、マイノリティの人々を助けるべき。他者を助けることで、結果的に国と大統領は明るい未来に向かって動いていくと思うんです。

平等で機会があって、どんな人にも居場所があって、どんな人でも受け入れられる国として見られたいし、自分の国をまた誇りに思いたいですね。

選挙後インタビュー

4. バイデン氏の当選が確実となったことについての感想はありますか?

何よりもまず、安心しました。優しさや謙虚さがあり、専門家の意見を聞いて学ぶ姿勢を持つバイデン氏に投票した人が多くいたことを嬉しく思います。この結果を受けて道で踊ったり、お祝いをしている人をたくさん見ました。

今はたくさんのことを期待しています。トランプ氏時代の政策が覆されることを望んでいますし、大統領にはヘルスケアを利用しやすくしたり、環境保護のために戦ったり…未来をよくするために動いて欲しいです。

だけど懸念もあります。個人的には、トランプ氏が敗北を認めるかが心配です。それにこの国の半分の人はトランプ氏の継続に投票したわけで、彼が言ったことに多くの人は共感したという事実があります。

バイデン氏には解決しなければいけない問題が山積みですし、アメリカにはやるべきことがたくさんありますが、私はこれは大きな勝利で、正しい道への一歩だったと思います。

Bさん(白人女性・27歳・理学療法士学生)

選挙前インタビュー

1.バイデン氏を支持する理由は?

今の時点では、人というより、政党を支持している感じです。(予備選挙の時点では)もっといい候補者たちがたくさんいたのに、アメリカ全体が受け入れるには、革新的すぎたように思われてしまったのが残念でしたね。だけどカマラ氏には期待してます。

2. 前回の選挙はどちらに投票しましたか?

ほとんど同じ理由で、ヒラリー氏。私たちをよりよい方向に導いてくれると感じていました。

3. アメリカ国民として、国や支持する候補者に何を求めますか?

たくさんあります! 国と大統領には、制度上の人種差別や、環境問題と戦ってほしいです。手つかずの自然をそのまま保護すること、先住民族の人たちの権利、銃の規制、医療体制の改革、全員が安全な中絶をできること…。そして新型コロナウイルスの感染拡大をコントロールできるリーダーシップを求めています。あと個人的には、学生ローンの問題もサポートしてほしいですね…。

選挙後インタビュー

4. バイデン氏の当選が確実となったことについての感想はありますか?

トランプ氏が負けを認めず、 色々なことを今以上に台無しにするんじゃないかと心配です。それによって、新しい大統領としてのバイデン氏の仕事は大変になると思います。

バイデン氏にはコロナに対しての国としての方針を固めること、経済を回復させるための何かしらの対策、環境問題と戦うことを求めます。だけどそれと同時に、そこまで期待もしていません。トランプ氏のような浅はかな行動はせず、“いい大統領”であってほしいですね。

アメリカはとても分断しているので、バイデン氏が進めたい政策を実際に行うのは難しいでしょうし、それに対して熱心な民主党派はイライラすることもあると思います。だけど今は、少しづつ進めていくしかないのです。

kamala harris launches presidential campaign in her hometown of oakland
Mason Trinca//Getty Images

Rさん(黒人女性・31歳・公益社団法人勤務)

選挙前インタビュー

1.バイデン氏を支持する理由は?

多くの問題に対する方向性、そして政党として支持しているから。バイデン氏は好きではないけれど、支持していた民主党の候補者が最後まで残らなかったので、彼が今の選択肢では1番かなと思います。

2. 前回の選挙はどちらに投票しましたか?

ヒラリー氏。

3.アメリカ国民として、国や支持する候補者に何を求めますか?

たくさんありますね。気候変動、健康保険、人種的な不公平さ、所得の平等性などに注力してくれる大統領がいいなと思っています。

選挙後インタビュー

バイデン氏とカマラ氏が政権を握る結果には満足していますし、トランプ氏がもう大統領ではなくなることが本当にうれしいです。

バイデン氏は、私が最初から支持していた候補者ではないので、色々と思うことはあります。まずは初めの100日間、彼がどう進めていくか、注目していきたいですね。

Jさん(白人女性・30歳・エンターテイメント会社勤務)

選挙前インタビュー

1.バイデン氏を支持する理由は?

バイデン氏とハリス氏に投票しますが、彼の政策すべてや、民主党をサポートしているわけではないです。

バイデン氏に投票する主な理由は、トランプ氏には道徳がないから。彼は失礼で、自己中心的で、偽善者で、思いやりや共感力に欠けています。核戦争や、あるいは内戦を引き起こしてしまうのではないかとも思います。

私の友達や家族を守るためにも言いたいのが、トランプ氏はキリスト教の視点を全く代表していません。それを信じて彼を支持する人がいることに、胸が痛くなりますね。

バイデン氏の政策では、私は同性婚の合法化には賛成です。全ての人が法に守られるべきだと信じていますし、誰かの宗教によって、それを他の人から奪うべきではないと思います。

個人的には恵まれない人々を助けることや、社会を助けるプログラムを作ることに興味があるので、公立学校にもっとお金をかけたり、医療が全員に行き渡るようにプログラムを作ったり…。そして、高所得者の税金を増やすべきだと思います。

今回、私は無所属として事前登録しましたが、* フロリダ州に住んでいるので、予備選挙では、共和党・民主党のどちらにも投票できなかったんです。**

現状の政党システムだと、候補者の多様性を妨げるし、中間層の声もなくなってしまうので、変えてほしいと思っています。選挙人制度についても、疑問に感じる部分が多いですね。現状だと、二大政党以外が票を十分に獲得することは、ほぼ不可能なこと。彼らに投票したら、その一票には意味がないとされてしまうからです。

*アメリカ大統領選では、事前の有権者登録をしなければ投票権はない。また、登録の際に支持する政党を記入する欄がある。

**フロリダ州は、州規定で予備選挙に投票できるのはいずれかの政党に登録した人のみ。

3. 前回の選挙はどちらに投票しましたか?

私はトランプ氏が好きではないし、信用していないし、尊敬していません。前回はヒラリー氏に投票しました。彼女の政策を支持していたわけではないですが、全てに同意できる候補者に投票できることはほぼないと思うので。

4. アメリカ国民として、国や支持する候補者に何を求めますか?

アメリカはいかに自分たちが「素晴らしいか」をいつも話していますし、どんな人でも自分のお金や社会的ステータスを上げることができる「アメリカン・ドリーム」という考えがあります。だけどこれは歴史的に見ても、ほとんどのアメリカ人にとって間違ったものだと思います。

歴史的には白人男性が権力を持ち、平等に見えるようにしながらも、マイノリティや女性を下に見ています。トーマス・ジェファーソン(第3代アメリカ合衆国大統領で、「アメリカ独立宣言」の起草者のひとり)は「全ての人間は平等です」と独立宣言に書いていながら、奴隷を所有していました。

今年で女性が投票できるようになって、ようやく100年。アメリカには自分たちの欠点に気づき、コミュニティとして団結し、お互いを助け合う、より良い未来を築いて欲しいです。市民を下に置き続けないで、違う派閥の間で私たちが作り上げたダブルスタンダードを理解してほしいです。

権力のある人たちは、私たちの世代やもっと若い人たちが政治に関心を持ち、政治の力を理解してもらうようにする必要があります。私の世代は、昔の伝統にとらわれず、新しいアイディアを受け入れる人がほとんどなので。そして神がこの国をもっと幸せにして、市民全員を健康に導いてくれることを祈っています。私はアメリカ国民に成功してもらいたいし、幸せを見つけて、人生に満足してほしいと思っています。

選挙後インタビュー

4. バイデン氏の当選が確実となったことについての感想はありますか?

ひとまず開票が終わったので、まだ慎重ですが前よりは楽観的にはなりました。だけど私はトランプ氏は不合理な人なので、票を尊重しないと思います。たとえ再度票が数えられ、彼が間違っていると証明されても。

彼は2016年の大統領選でも、勝たない限り結果を受け入れない姿勢を見せていたし、大統領の権力を経験した今、より事実を受け入れないと思います。証明があるのに結果を信じないのであれば、説明する術はありません。それが私が恐れていることです。トランプ氏は大統領ではなくなるかもしれませんが、白人至上主義や教育の欠如、科学軽視は、まだアメリカに存在しているのではないかと感じています。

あとはバイデン氏のリーダーシップも心配ですが、今回の選挙の記録的な投票率の高さで、人々がいかに自分の意見を持っているかが分かりました。政党の所属に関わらず、政治家の説明責任を求めることができると感じましたね。

個人的には、初の女性副大統領で、移民の娘、そしてジャマイカとインドのルーツを持つ、カマラ氏が選ばれたことが楽しみです。これこそが本当の「アメリカン・ドリーム」の代表です。

今週末はお祝いしますが、引き続き平和と理解が訪れることを願います。そしてこれはまだ始まりにしか過ぎないし、市民がのびのび生きるためにはこの国にはもっとやらなければいけないことがたくさんあると思います。

Nさん(ラテン系男性・26歳・ウエイター)

選挙前インタビュー

1.バイデン氏を支持する理由は?

トランプ氏の考え方や権力の行使の仕方に1000%反対だからです。彼の無知無能さと差別的発言に憤りを感じています。

2. 前回の選挙はどちらに投票しましたか?

クリントン氏に投票しました。トランプ氏が大統領になる前から、彼は国の代表になるのにふさわしくないと感じたし、差別的で、偏見のある人だと感じました。

3. アメリカ国民として、国や支持する候補者に何を求めますか?

アメリカ人であることを誇らしく思えるような大統領であってほしいです。尊厳があって、誠実で、この国で助けを必要としている、あるいは忘れられてしまった人たちをサポートする人。国を分断するのではなく、団結させてくれるような人。国のお金を、すでに権力がある人のためだけのために無駄にするのではなく、国が向上し、よくなるように使ってくれる人。政治経験があって、地球と自然のために、戦ってくれる人。そんな人がいいです。

選挙後インタビュー

4. バイデン氏の当選が確実となったことについての感想はありますか?

本当に安心しました。トランプ氏は、同性愛や女性の権利への偏見を持っていたので。だからバイデン氏が大統領になるのが嬉しいです。

それだけでなく、カマラ・ハリス氏が初めての黒人・有色人種の女性副大統領になるのは、本当に歴史的な出来事ですよね。 二人ともこの国を団結させてくれると思うので、希望が持てます。積極的に改革することで妨げられることもあるとは思いますが、二人の未来に期待しています。

あとはパリ協定* へ復帰する姿勢にも賛成です。バイデン氏は、アメリカのグリーンエネルギー政策を進めようとしていますが、それは地球を救うには重要なこと。激動だったトランプ政権の後、この国を統一してくれる人が科学と努力を信じる人で本当に良かったです!

* 2015年に合意された、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み

Nさん(日系男性・28歳・医療系メーカー勤務)

選挙前インタビュー

1.バイデン氏を支持する理由は?

人工中絶規制に反対だからです。私は共和党エリアの南部生まれ・南部育ちで、憲法修正第2条*を支持していますし、共和党は個人の自由を守る党だと信じて育ってきました。

でも国が、人の身体に何をして良いか悪いか、ということに直接介入することは許せません。自分の中に宿る命は、本人や家族の問題であり、国家には決める権利はないと思いますし、バイデン氏の「中絶は国家権力が指図していいことではない」という考え方に強く同意します。

* 「規律ある民兵団は、自由な国家の安全にとって必要であるから、国民が武器を保有し携行する権利は、 侵してはならない」

2. 前回の選挙はどちらに投票しましたか?

日本にいたため、投票しませんでした。

3. アメリカ国民として、国や支持する候補者に何を求めますか?

なぜ民主党への支持が、移民や過疎化地域から離れたか、ちゃんと向き合い国を統治すること。オバマ氏がウォール・ストリートからの献金を優先し、2008年以降も金融機関への緊急融資を決行した結果、経済を支えるはずの金融システムがただお金を吸い上げるだけになりました。

サブプライム問題* で生活を失ったブルーカラーやラテン系移民は、恩恵を受けることはなかったのです。守ると誓った人たちを敵にして、高学歴で恵まれた人たちを優先した経済政策では、アメリカは救えないことを自覚して欲しいですね。

* 低所得者向け住宅ローンの不良債権化によって引き起こされた経済問題

選挙後インタビュー

4. バイデン氏の当選が確実となったことについての感想はありますか?

医療保険制度改革法の機能強化の前に、アメリカの健康保険の原価構造を変えないと医療費は絶対下がらないと感じています。

そしてバイデン氏に限っては、議員と副大統領として40年間続けてきた、ご都合主義をやめてくれたらと思います。政府に見捨てられた国民を作ってしまったのは、彼が副大統領の時なので。オバマ時代の二の舞にならないようにしてほしいですが、若者たちを閣僚に登用してくれたら意見が変わるかもしれませんね。