米連邦最高裁、トランプ氏の立候補認める コロラド州の判断を覆す

ドナルド・トランプ前米大統領

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画像説明, ドナルド・トランプ前米大統領

バーンド・デバスマン・ジュニア、BBCニュース、米首都ワシントン

アメリカの連邦最高裁判所は4日、ドナルド・トランプ前大統領には大統領選挙への立候補資格がないとしたコロラド州の判断を覆した。同州の最高裁は、国家に対する反乱に関与した者は官職に就けないとする合衆国憲法修正条項を理由に、トランプ氏は同州予備選挙に立候補できないとしていた。

連邦最高裁の判断は判事9人全員の一致によるもの。コロラド州だけに関するものだが、他州での同様の訴訟についてもトランプ氏の立候補が認められる見通し。

コロラド州はトランプ氏を、2021年の連邦議会襲撃を扇動したとして、共和党の予備選から締め出した

連邦最高裁は、そうした権限を持つのは州ではなく連邦議会だけだと判断した。

この判決によりトランプ氏は、5日のコロラド州予備選で候補者になれる。

トランプ氏は共和党の指名候補争いで勝利が見込まれている。11月の大統領選本選挙では、民主党の現職ジョー・バイデン大統領と再び対決する可能性が高い。

トランプ氏は4日の判決の直後に勝利を宣言。自身のソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルに、「アメリカにとっての大勝利」だと投稿した。その後、支持者らには資金提供を呼びかけるメールが送られた。

トランプ氏はまた、フロリダ州の私邸マール・ア・ラーゴで、判決を「非常によく作られている」と評価。「私たちの国をひとつにまとめることに大きな役割を果たすだろう」と述べた。

さらに、「対立候補がそれを望むからといって、誰かを選挙戦から除外することなどできない」と付け加えた。

コロラド州は「失望」

一方、コロラド州のジェナ・グリスウォルド州務長官は、この日の判決に失望しているとコメント。「コロラド州は、宣誓を破る反乱者を候補者名簿から外すのを認められるべきだ」と述べた。

コロラド州で今回の訴訟を起こした監視団体「ワシントンの責任と倫理のための市民(CREW)」も声明を発表。連邦最高裁が「いま求められている判断を示すことはできなかった」が、「それでも民主主義にとっては勝利だ。トランプは反乱暴徒として歴史に名を残す」とした。

コロラド州に続き、メイン州イリノイ州も同様の理由で、トランプ氏を予備選の候補者名簿から除外した。

ただ、両州での動きは、コロラド州最高裁の判決を不服としたトランプ氏の上訴を連邦最高裁が審理する間、保留された。

連邦最高裁はこの日、「州の役職に就いている者や就こうとする者について、州が資格なしとすることはできる」と判断。「だが、連邦政府の役職、特に大統領職に関しては、州は合衆国憲法の修正(第14条)3項を行使する権限をもたない」とした。

そして、連邦政府の役職者やその候補者に対して合衆国憲法修正第14条3項の規定を行使できるのは連邦議会だけだと結論づけた。

南北戦争時代にさかのぼる合衆国憲法修正第14条3項は、国家に対する「反乱または謀反に関わった」連邦、州、軍関係者が再び官職に就くことを禁じている。

「フリー・スピーチ・フォー・ピープル」などの団体は、2021年1月6日に起きた、平和的な政権移行を遅らせようとした試みは、憲法修正条項の反乱の定義に合致すると主張していた。

連邦最高裁のエイミー・コーニー・バレット判事は個別の意見書で、今回の判断で9人の判事全員の見解が一致した事実は「アメリカ人がしっかり受け止めるべきメッセージ」だと書いた。

2021年1月の連邦議会襲撃事件

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画像説明, 訴訟の原告らはトランプ氏が2021年1月の連邦議会襲撃を扇動したと主張した

バレット判事はまた、「連邦最高裁は大統領選の不安定な時期に政治的な問題を解決した」、「特にこのような状況において、連邦最高裁の言葉は、国の温度を上げるものではなく、下げるものであるべきだ」とした。

一方、リベラル派の判事3人は、今回の判決は「連邦議会が特定の種類の法律を制定した場合にのみ、反乱を理由とした失格がありうる」と明確にするものだと説明。そうすることで、「これまでなかった憲法上の問題を決着させ、この裁判所(とトランプ氏)を将来の論争から隔離」しようとしていると主張した。

オハイオ州のケース・ウエスタン・リザーヴ大学のアティバ・エリス教授(法学)は、トランプ氏の除外に関する連邦最高裁の懸念は「公正なもの」だが、判決は「ずっと広い範囲に及ぶ結果をもたらす可能性がある」と述べた。

また、「今回の判決は、この訴訟で争点にならなかった憲法解釈の問題にも道を開くことになる。連邦議会は現在、党派間の争いによる行き詰まりで、この問題に対して何もしないことが確実だが、その議会に問題を委ねている」と説明。「今回の判決により、合衆国憲法修正(第14条)3項に基づく立候補資格の問題は、2024年大統領選の前に解決されないことが事実上、確実となった」とした。

ニューヨーク州のオルバニー・ロー・スクールの法学者レイ・ブレシア氏は、今回の判決によって、「異なるプロセスをもつ州がパッチワークのように」存在する状況を防げると述べた。

「もし連邦最高裁がコロラド州のこうした手続きを認めていたら、別の州で悪徳検事が、対立政党の候補者は反乱を起こしたから候補者としては不適格だと言い出すのを止められなくなっていた」

コロラド州と他の14州では「スーパーチューズデー」の5日、共和党の有権者が予備選や党員集会で投票する。

トランプ氏はすべての州で、唯一残っている対立候補のニッキー・ヘイリー前国連大使を破るとみられている。