余すことなく、丁度よく。一合瓶の日本酒専門店「きょうの日本酒」|ZOOM LIFE

Vol.544

FOOD

03 MAY 2024

余すことなく、丁度よく。一合瓶の日本酒専門店「きょうの日本酒」

日本各地に地酒があり、多様な魅力がある日本酒。一升瓶は大きすぎるし、四合瓶でもなかなか飲みきれない。一方で、お酒を劣化させないために開けたら早く飲みきらなければいけない気がして、なかなか開けられない方も多いのではないだろうか。そんな日本酒が多い中、一合瓶の飲みきりサイズで作られている、一合瓶の日本酒専門店「きょうの日本酒」を紹介したい。

きょうの日本酒の開発秘話

1合はちょうどいい量の約180ml
「きょうの日本酒」の誕生のきっかけになったのは、「日本酒を、だれもが気軽に手にとり、楽しめるものにしたい」「日本酒で、日常にちょっとした幸せを届けたい」「日本中の酒蔵を元気にしたい」という想いだ。詳細について代表の濱道佐和子氏にお話を伺った。

「現在、国内には、およそ1400の酒蔵がありますが、日本酒の製造免許は新規発行されないため、酒蔵数は増えることなく、廃業に伴い減る一方で、毎月3つの酒蔵が廃業しています。その多様性や酒蔵独自の技術が、このまま何もしなければ、廃業とともに失われていってしまう。近年コロナの影響で、飲食店や旅先での日本酒消費が落ちたことも、販路のほとんどを酒屋経由の飲食店が占める日本酒業界においては、さらなる打撃となっています」と話す濱道氏。さまざまな酒蔵さんの声を聞く中で、なんとかできないものかと考えていたという。

日本古来のお酒であり、生活や祭事に深く根付いていた日本酒
「日本酒は『人の手と想い』そして『蔵の環境』がつくるものであり、一度その酒蔵がなくなると、二度と同じ味は作れない」と話す濱道氏。「人の想いや技術が詰まった、唯一無二の銘酒が全国各地にある。ひとつひとつにストーリーがあり、表情があり、米と水と麹というシンプルな原材料によって作られた味わいの多様性に常に驚かされる。そして、これだけ人の手がかかっているお酒なのに、安すぎるのではと思ってしまうくらい、手に取りやすい価格帯。ただ、その魅力が十分に伝わっていないのではないか。どこか"特別なお酒"として扱われることも多いためか、日常で楽しむお酒として捉えている人が少ないことは、やはりもったいないと感じています。もっと日本酒を身近なものにして、その魅力をたくさんの方に知ってもらいたいと思うようになりました」

きょうの日本酒では自分好みの日本酒に出会える
日本酒を身近にするためにはどうすればいいか。20代から30代を中心に、日本酒との関わり方についてヒアリングをした結果、日本酒は好きだけど自分では買わないという人が多く、その理由として「飲みきれないから買いにくい」「選び方がわからない」という声をよく聞いたという。一升瓶は大きすぎるし、四合瓶でも1~2人だとなかなか飲みきれない。一方で、お酒を劣化させないために開けたら早く飲みきらなければいけない気がして、なかなか開けられない。また、日本酒の味わいを、そのラベルから自分で読み取ることもなかなかに難しい。そういった声を受けて、「一合瓶の飲みきりサイズ」で、「味わいをわかりやすく伝える情報設計」により、「きょうの日本酒」は誕生した。

1合はおちょこ4~5杯分程度。おいしく飲み切れる量だ

ラベルデザインに込められた想い

持ちやすく、手軽に飲みたいと思えるサイズ感
ニュートラルなラベルデザインで、中に入っている日本酒の色もわかりやすく、今までの日本酒よりも手に取りやすい。濱道氏は、「各酒蔵で瓶詰めいただくため、瓶の規格自体は共通規格のものを使用しております。瓶にはフロスト加工を施し、日本酒の繊細で美しい色彩差を認識できるようにしました。瓶の表側には『一杯の酒』を意味する”一献マーク”を象徴的に印刷し、日本酒が元来持つ品格を残しながら軽やかな印象を付け加えることで、日本酒離れが著しい層にも受け入れやすいものにしております」と述べている。

また従来のラベルには、酒蔵名、銘柄、酒米、精米歩合、アルコール度数、酵母、日本酒度などの情報に加え、純米大吟醸・特別純米などの「特定名称酒」と呼ばれる区分や、生酒・火入れ、生酛・山廃、ひやおろし、あらばしり、斗瓶囲い、などの造りや搾り方に関する言葉が載っている。しかしこういった情報のどこを見ればよいのか、どこから味わいを読み取っていくのかを即答できる人は少ないだろう。

感覚的に日本酒を理解できる『酒読』
「各銘柄が持つストーリー(酒読 - さけよみ)を140字程度で”ちょうどよく”まとめるとともに、おすすめの飲み方を瓶首の紙筒に記載しております。おうちでお酒を飲みながら『酒読』を読んでいただくことで、そのお酒が作られた背景・情景を一緒に愉しんでいただけるようにしております」

きょうの日本酒のラベルには難しい言葉は使わずに、読みやすい言葉で書かれている。「きょうはどれにしようかな」と、お酒を選ぶ際の基準にしたり、飲みながら読んで「たしかにそんな香りがする」と楽しんだり。日本酒と飲み手の距離を縮めるための、“お酒を読む”ツールとなっている。

日本全国を巡って出会った選りすぐりの銘柄

好きなつまみと日本酒の個性を気軽に楽しむ
きょうの日本酒で扱っている日本酒は、日本酒のプロフェッショナルであり、湯島天神下 すし初 四代目の山内祐治氏と濱道氏が日本全国を巡り、一緒に選定しているそうだ。

「個人的には、難しいことは抜きにして、飲んだ際に『美味しい!』と思わず言ってしまうようなお酒、誰にでもおすすめしたくなるお酒を選ばせていただいております。純米酒でないといけない、純米大吟醸が良い、などの特定名称区分による選び方はしておらず、心から美味しいと感じるお酒をお届けすることを大事にしております。ですので、どれも自信を持っておすすめしたい銘柄ばかりなのですが、きょうの日本酒をお愉しみいただく中で、日本酒の『味の幅』を体験いただけると嬉しいです。飲み比べができるのは一合瓶ならではの体験です。きっと、日本酒ってこんなに味が違うんだ、個性があるんだ、と感じていただけるかと思います」と濱道氏は教えてくれた。

シェアして何本かを飲み比べしても楽しい

味の幅を探検する

「味の幅を探検する」 6本セット
日本酒はどれも、米・水・微生物から造られているが、それぞれ味わいや香りは全く異なり、その違いを呑み比べで体験してほしいとの思いから、きょうの日本酒では3本、6本、12本以上のセット販売をしている。今回は「味の幅を探検する」というセットを紹介したい。「味の幅を探検するセット」は、栃木県・相良酒造の「三毳山」、兵庫県・本田商店の「龍力」、群馬県・土田酒造の「土田生酛」、宮城県・川敬商店の「黄金澤」、岩手県・南部美人「南部美人」、秋田県・大納川の「大納川」というラインナップで、個性の異なる銘柄が6本入っている。

三毳山は、アルコール度数16度、精米歩合55%、おすすめの飲み方は冷酒、おすすめの酒器はどれも良し、といったようにアルコール度数や精米付合のみならず、それぞれのおすすめの飲み方やおすすめの酒器も紹介してくれる。飲む前から心が躍るような日本酒紹介文も読むのが楽しい。

大切な人へ送りたい、ギフトにぴったりなオリジナルの化粧箱も
その他、香りを嗅ぎ口に含んだ瞬間に果実のような印象が飛び込んでくる、華やかな銘柄たちを集めたセットや、日本酒に馴染みのない方に向けて、呑みやすい銘柄を集めたセットなどもあり、どれも飲みたいと思わせてくれるセットを販売している。そのほか、日本酒を通して「きょうを潤す」ということをテーマに掲げているきょうの日本酒は、そのテーマを体現すべく、酒器や米ぬか蝋燭など、日本酒の周縁のものもあわせて提供している。

きょうの日本酒で一日を潤す

日本酒のある生活を日常に
「日本酒は深さも持っており、それゆえに面白いというのもありますが、日本酒について難しいことや細かいことはわからなくても、気楽に日本酒を愉しんでいただき、より多くの方に日本酒に親しみを持ってもらえると嬉しいです」と話す濱道氏。日本酒の美味しさやストーリーは、自分自身や誰かと、対話するきっかけをつくってくれ、そうした時間を通して、「きょう」一日が潤されていく。普段日本酒を飲まない方も是非手に取ってみてはいかがだろうか。

きょうの日本酒

味の幅を探検する 6本セット ¥11,500 (税込)
https://kyouno.jp/