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トップメッセージ

都市・生活を創造する
企業への変革・飛躍

2022年度を振り返って

新型コロナウイルス感染症の影響によるオンライン化の定着、行動様式の変化等を受け2020年度から2年連続で赤字計上しておりましたが、行動制限緩和等による人々の外出機会の増加等に伴う旅客運輸収入の回復、コスト構造改革の進展により、2022年度は黒字へ転換することができました。
一方で、テレワークには、感染症対策と働き方改革の2種類があると考えていますが、働き方改革の進む大企業が集中する都心部のテレワーク率は高く、これが一定程度減収要因になっています。電気料金の高騰や、半導体等の部品の供給不足、調達金利の上昇などの問題もあり、厳しい経営環境は今後も続くものと推測しています。
2023年度は、新型コロナウイルス感染症の感染法上の区分が変更され、人々の外出機会の増加に加え、インバウンドの増加により、当社の旅客運輸収入は回復に向かいつつあります。今後もお客様の新たなお出かけ機会の創出を通じて、需要の喚起に努めていきたいと考えています。

中期経営計画「東京メトロプラン2024」の改定

当社グループは2022年度から「東京メトロプラン2024」に基づき取組みを進めてきましたが、旅客運輸収入や電気料金、調達金利等、中計策定時の前提が大きく変化したことから、設備投資計画の見直しやポストコロナを見据えた経営目標値の上方修正を行いました。
サステナビリティを経営の中心に据え、ネクストノーマルを見据えた「構造変革」・「新たな飛躍」を目指していくこと、お客様の安全を第一に4つの重点戦略・施策を引き続き進めていくことは変わりませんが、主に次の6つの点を推進していきます。


1.コスト構造改革・次世代型業務変革

2.安全性・利便性の向上

3.顧客体験価値の創出に向けたアクションプランの作成

4.新線建設

5.都市・生活創造事業の成長

6.ESG・サステナビリティに関する取組み


コロナ禍において、お客様が4~6割減少しても、一定程度の輸送コストはかかるため、固定費を抑制することが経営継続に必要であることを痛感しました。緊急的な抑制だけでなく、抜本的なコスト構造改革をしなければならないと考え、社内で議論を進めています。
具体的には、設備状態等を踏まえた検査・更新周期の見直しや設備のスペックの見直し、相互直通他社との仕様共通化などを進めていきます。
また、次世代型業務変革を進め、DX 等により働き方・仕事像を変えていきます。仕事の中身を変えて、社員が創造的な仕事に注力しようというのが業務変革の目指すところです。
安全性・利便性の向上には、「Equity」という観点から誰もが等しく安全に移動できる環境を享受できるようにするためにホームドアやエレベーターの設置が重要です。鉄道駅バリアフリー料金制度を活用し、2025年度のホームドア全線整備完了をはじめとした各種バリアフリー設備整備を促進します。
顧客体験価値の創出とは、移動先での体験価値を高めることです。東京には、色々な街に色々な魅力があり、最先端で、かつ多くの才能が集まる都市だと考えています。それらにご案内し、巡っていただく(City-Tourism)ことで、お客様の毎日が楽しくなって、元気になっていく、当社はそういったお手伝いをしていきたいと考えています。
新線建設は、企業価値を高めるチャンスだと考えます。交通結節点として巨大でありながら当社路線が繋がっていなかった品川にアクセスする南北線延伸、ベイエリア・東京都北部へアクセスする有楽町線延伸の意味は大きく、ネットワークの拡充はお客様・地域・社会経済に大きなインパクトを与えることになると思います。
コロナ禍の中で、鉄道一本足は厳しいと強く感じましたので、都市・生活創造事業の成長を通じて「鉄道を核とした都市生活創造企業」に進化していくことを目指していきます。
神宮前六丁目再開発をはじめとした不動産事業の拡大と、まちづくりとの連携により、駅・まち一体となった魅力的な空間の創造を図ることで、人やまちの進化に貢献していきます。さらには流通事業、広告事業、情報通信事業の展開・成長を通して、お客様や社会のニーズにお応えしていきます。先ほどの体験価値の創出と合わせて、もっと人が主役になって、行って楽しく、元気になれる、人々がそういうワークやライフを持てるような時間・空間づくりができたらと思っています。
ESG・サステナビリティに関しては後述しますが、CO2排出削減目標の上方修正や、東京メトログループ人権方針の策定など、サステナビリティ経営の強化に努め、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

サステナビリティ経営ビジョンと長期環境目標
「メトロCO2 ゼロ チャレンジ 2050」の改訂

サステナビリティ経営ビジョンを策定して約1年を経過し、現業とのミーティングにおいても、社員から「サステナビリティ」という言葉が自然に出てくるようになり、社内にサステナビリティが徐々に浸透していっていると感じます。企業価値活動表彰にサステナビリティ賞が設けられ、社員の様々な取組みがサステナビリティと直接つながることで、モチベーション向上にもつながりつつあります。
社会的にも、鉄道の環境優位性があらためて着目されており、首都東京の都市機能を支える東京メトログループの事業は持続可能な社会の実現に直結していると言えます。またサステナビリティへの取組みを進めることは、当社の持続可能性を高めていくことにもつながります。鉄道を選択していただくこと自体がサステナビリティにつながることをお客様にもっと理解していただきたいと考えています。
CO2排出量削減という点では、2021年3月に設定した東京メトロ長期環境目標「メトロCO2ゼロ チャレンジ 2050 」の達成に向けたさらなる取組みの推進に向け、2023年3月に、2030年度削減目標を30%から50%に引き上げました(2013年度比)。
当社グループのCO2排出の多くは電力利用によるもので、これに関する対処が大きな課題です。昨年度は電気料金が高騰して、経営に大きな影響を与えました。CO2の排出と電気料金をコントロールする意味でも事業全体で使用するエネルギー量を減らす省エネ施策の推進と再エネの活用を進めることが重要です。先端技術の採用や改善活動等の創意工夫により、車両の省エネ化、駅照明のLED化等による省エネを推進していますが、さらなる省エネ化が必要です。またバーチャルPPAや非化石証書の調達も含めてCO2排出量を削減していきます。まだ切り札といえる方法はありませんが、再エネのメニューも増えてきて、価格の安定性と削減効果のバランスの点でも最近は以前より具体性が高まってきたという印象を持っています。近年の台風や豪雨を見て、一人の人間として、そして経営者として、地球温暖化に対して手立てを講じなければいけないと、痛切に感じています。

人権方針の策定

サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の一つである「人権の尊重」の推進に向け、事業活動によって生じる全ての人権問題の解決に向けたコミットメントとして、「東京メトログループ人権方針」を2023年3月に策定しました。
策定に当たっては、有識者と当社の経営層で意見交換を行って多くの意見をいただき、それらを反映することで、多角的な視点で課題を抽出することができました。多様性をみんなが理解し、一人ひとりが最大活躍する社風を形成するという意味でも良いタイミングだったと思います。
社内では、輸送を提供する中で、安全を提供できなかった場合の人権の侵害について議論がありました。これは意見が分かれましたが、私は事故などの影響を受けた方のお話をお聞きする中で、本来、安全に地下鉄に乗って目的地に行くことが当たり前に享受できたはずなのに、そうならなかったとすれば、それは人権の侵害となる、重要な人権課題である、として方針の一番上に据えました。
東京メトログループ人権方針の浸透は、多様な価値観を尊重することでお客様に安心してご利用いただけること、また社員にとっては心理的安全性が確保され、一人ひとりが最大限に活躍できるようになることにつながります。安全・サービスを提供するだけでなく、人権を尊重することでステークホルダーからの高い信頼を得ていくことは、事業運営上の大前提になると考えます。

人的資本への取組み

企業が経営戦略を全うするためには人財戦略が裏付けとして存在しなければなりません。「構造変革・新たな飛躍」への挑戦のために、社員一人ひとりをあらためて「人財」と捉え、目指す組織の姿や求める人財像を定義しました。
組織の姿として、“多様な社員がお互いに認め合い、アイデアを出し合い、切磋琢磨することで、価値を創出し続ける組織”を目指します。また、毎日多くの多様なお客様の輸送を担い、多様化するお客様のニーズに応えるためには、まず社員のDE&Iが必要です。人財確保の観点からも、社員一人ひとりの多様性を受け入れ、それぞれの状況や特性に配慮し、誰もが等しく活躍できる働きやすい環境を整え、最大活躍を促し、イノベーションにより新たな価値を生み出すため、これまで以上にDE&Iを推進します。2023年8月には「東京メトログループDE&I 宣言」を制定しました。
求める人財像には「自律」「挑戦」「協働」という3つの要素を掲げました。高い規範意識のもと、自ら動き、変化を恐れず行動でき、異なる価値観を受容・尊重し、周囲と連携することができる人財です。これらの人財像を実現するためには、個の力とチームの力の両方が重要です。リーダーには組織のメンバーに声をかけ、耳を傾けるとともに、安心感を高め、挑戦の意欲を引き出すリーダーシップの発揮を期待しています。

コーポレートガバナンスの強化

コーポレートガバナンス・コードに対応し、上場した際にもふさわしいガバナンス体制とするため、役員体制を変更し、社外取締役を取締役の3分の1以上となる4名にするとともに、女性取締役を2名選任し、多様性を高めました。また、経営の監督機能と業務執行機能の役割の明確化のため、執行役員制度を導入しました。
取締役会の多様な構成と独立客観性による活性化、手続きの透明・公正性、そしてリスクを適切にヘッジして執行する体制を構築することで、さらなる企業価値向上とサステナビリティ経営を推進していきます。

今後について

当社グループは、今後もグループ理念「東京を走らせる力」を念頭に、お客様の安全を第一に、首都東京の都市機能を支える交通事業者として、変わらぬ重要な役割を果たしながら、鉄道を核とした都市・生活創造企業グループを目指してまいります。今後とも変わらぬご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

2023年10月
東京地下鉄株式会社

代表取締役社長 山村 明義