抗がん剤による脱毛の予防対策 | 診療ご希望の皆さまへ | 東京女子医科大学病院 化学療法・緩和ケア科

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抗がん剤による脱毛の予防対策

1. 抗がん剤による脱毛

現在行われているいくつかの抗がん剤の中には、高頻度に脱毛をきたす種類の薬剤があります。通常、がんの標準治療薬(最も効果のあるとされる治療薬)を選択するため、治療を受けていく上で脱毛が避けられないことがあります。抗がん剤が毛根の細胞にも作用して抜け毛となることが原因なので、頭髪だけでなく、眉毛や体毛まで脱毛をきたすことがあります。特に頭髪は外見が変わってしまうことから、強く不安に思われる患者さんやご家族が多いですが、正しく副作用を理解して治療に臨むことが重要です。

朝起きたとき、枕に大量の抜け毛がついていたり、脱毛をしてしまった姿を鏡でみたりすると「もう命が長くないのではないか」「副作用で死んでしまうのではないか」など思われる患者さんもいらっしゃいますが、脱毛が起こってもそれ自体が命に関わるようなものではありません。多くの場合、脱毛をきたす抗がん剤を中止すればまた生えてくるとされています。ただし、抗がん剤を中止しても、毛量が減ってしまった、毛質が変わった、など、後々まで影響が残ることもあります。

2. 脱毛に対する対処方法について

一般的には以下のような対処方法が行われています。

  • 短くカットして、脱毛後の変化が少なくなるようにする(かかりつけの美容院や理髪店に事前に相談をしてみると、これまでのお客さんで対応した経験がある美容師さんがいらっしゃるかもしれません)
  • こまめに寝具の抜け毛を掃除する(ハンディ掃除機やコロコロなどを準備しておく)
  • 無理に毛を抜かない(毛根を傷つけます)
  • 低刺激のシャンプーやリンスを使う(頭皮をやさしく洗う)
  • メガネ(伊達メガネ)をかける(太めのフレームのメガネだと眉毛の脱毛が目立ちにくくなります)
  • 帽子をかぶる
  • 医療用のウィッグ(かつら)を使う(帽子やウィッグはとても種類も値段も様々選べるので、オシャレを楽しむツールとして利用できるといいですね)

詳細につきましては、当科医師、外来化学療法室の看護師へいつでもご相談ください。

3. パックスマン(Paxman)による脱毛予防

昨年度より当科では、抗がん剤投与中に逃避を冷却して脱毛を抑制するシステム「Paxman Scalp Cooling システムOrbis」を導入いたしました。

この医療機器が承認された際の臨床試験のデータによりますと、抗がん剤投与中にパックスマンでの処置を受けた30名中8名(26.7%)が「50%未満の脱毛でウィッグは不要」と判定され、非脱毛率は有意に抑制されました。また、2名の医師いずれかが非脱毛と判定した症例は30名中18名(60%)でした。

完全に脱毛を予防できるというわけではありませんが、パックスマンを使っていると脱毛の程度が軽くなり、また抗がん剤を中止してから毛髪が生えてくるまでの時間も早くなる効果がありそうです。

パックスマンによる脱毛予防の処置方法や費用負担、予約方法など、詳細につきましては、当科医師、外来化学療法室の看護師へご相談ください。

当科で治療を受けられるすべての患者さんが、生活の質を保ちながら少しでも前向きに治療へ向き合えるように、共に考えていきたいと思っています。