17.1.1 国内第III相試験(二重盲検比較試験及びARDS Networkの基準に準拠した臨床試験)
二重盲検比較試験
4)及び国際的な試験方法であるARDS Networkの基準に準拠した臨床試験
5)において(いずれも投与前の臓器障害数が肺を含め3臓器以下の患者にシベレスタットナトリウム水和物を14日間投与した)、全身性炎症反応症候群に伴う肺障害に対するシベレスタットナトリウム水和物の有用性が確認されている。
肺以外の臓器障害の診断基準
障害臓器 | 診断基準 |
心臓 | 循環血液量が適正で通常量のinotropic agentsに反応しない血圧低下(SBP<100mmHg) |
肝臓 | 血清ビリルビン>5mg/dL又はs-ALT>200IU/L |
腎臓 | BUN>50mg/dL又は血清クレアチニン>3mg/dL |
消化管出血 | 輸血を要する消化管出血 |
中枢神経系 | 3,3,9度方式による意識レベルで2桁以上 |
血液凝固系 | 厚生省DIC基準に基づくDIC |
17.1.2 国内第III相試験(二重盲検比較試験)
全身性炎症反応症候群に伴う急性肺障害患者116例を対象に、1時間あたり0.2mg/kgを盲検下で14日間静脈内に持続投与した。肺機能改善度の「中等度改善」以上は、シベレスタットナトリウム水和物の投与開始が肺障害発症後72時間以内の患者で72.5%(66/91例)、72時間を超える患者で54.5%(12/22例)であった。副作用発現率は18.6%(21/113例)であり、主な副作用はγ-GTP上昇11.5%(13/113例)、ALP上昇11.5%(13/113例)、ALT上昇8.0%(9/113例)、AST上昇5.3%(6/113例)であった
4)6)。[
7.1参照]
17.1.3 国内第III相試験(ARDS Networkの基準に準拠した臨床試験)
投与前に肺を含め4臓器以上の多臓器障害を合併する患者、高度な慢性呼吸器疾患を合併する患者、熱傷、外傷に伴う急性肺障害患者を除外して実施したARDS Networkの基準に準拠した臨床試験(20例、1時間あたり0.2mg/kgを14日間静脈内に持続投与)において、Ventilator Free Days[VFD:28日間での人工呼吸器から離脱した状態での生存日数](平均±標準偏差)は、14.3±8.6日であった。副作用発現率は25.0%(5/20例)であり、主な副作用は、γ-GTP上昇25.0%(5/20例)、AST上昇、ALT上昇及びALP上昇がそれぞれ15.0%(3/20例)であった
5)7)。
なお、国内第III相試験(二重盲検比較試験)に組み入れられた患者のうち、上記ARDS Networkの基準に準拠した臨床試験の選択基準に合致した患者107例でのサブグループ解析において、VFD(平均±標準偏差)は、対照群(61例、0.004mg/kg)では10.7±10.8日、至適用量群(46例、0.2mg/kg)では13.1±10.9日であった
5)7)。
17.1.4 国内第II相試験
全身性炎症反応症候群に伴う急性肺障害患者57例を対象に、1時間あたり0.2mg/kgを盲検下で5日間静脈内に持続投与した。全般改善度の「中等度改善」以上は、投与前の臓器障害数が肺を含め3臓器以下の患者で63.2%(24/38例)、4臓器以上の患者で33.3%(5/15例)であった(なお、本試験では肺以外の臓器障害の診断基準を定めていない)。副作用発現率は7.3%(4/55例)であり、主な副作用は肝機能障害7.3%(4/55例)であった。また、関連性が否定できない臨床検査値の異常変動発現率は14.8%(8/54例)であり、γ-GTP上昇13.9%(5/36例)、ALP上昇11.4%(5/44例)、LDH上昇8.9%(4/45例)であった
8)9)。
17.1.5 国内臨床試験(全般改善度の評価)
二重盲検比較試験を含む臨床試験234例において、全身性炎症反応症候群に伴う肺障害に効果がみられ、全般改善度の「中等度改善」以上は70.5%(165/234例)であった
10)。
17.1.6 海外第II相試験(ARDS Networkの基準に準拠して実施した外国臨床試験)
急性肺障害患者487例(プラセボ群246例、シベレスタットナトリウム水和物投与群241例)を対象に、ARDS Networkの基準に準拠して、海外第II相無作為化二重盲検プラセボ比較臨床試験(高度な慢性呼吸器疾患を合併する患者は除外し、投与前に肺を含め4臓器以上の多臓器障害を合併する患者、熱傷、外傷に伴う急性肺障害患者を除外せずに実施)において、シベレスタットナトリウム水和物を0.16mg/kg/hrの投与速度
注)で最大14日間の持続静脈内投与を行った。その結果、VFD(平均±標準偏差)は、プラセボ群11.9±10.1日、シベレスタットナトリウム水和物投与群11.4±10.3日であり、28日死亡率は、プラセボ群26.0%(64/246例)、シベレスタットナトリウム水和物投与群26.6%(64/241例)であった。180日死亡率は、プラセボ群31.3%(77/246例)、シベレスタットナトリウム水和物投与群40.2%(97/241例)であり、プラセボ群と比較してシベレスタットナトリウム水和物投与群で180日死亡率は統計学的に有意に高かった
11)。[
5.2参照]
注)本剤の承認された用量は、1時間当たり0.2mg/kgである。
17.2.1 ARDS Networkの基準に準拠して実施した国内市販後臨床試験
(1)全身性炎症反応症候群に伴う急性肺障害患者556例を対象に、ARDS Networkの基準に準拠して実施した製造販売後臨床試験
※(投与前に肺を含め4臓器以上の多臓器障害を合併する患者、高度な慢性呼吸器疾患を合併する患者、熱傷、外傷に伴う急性肺障害患者を除外して実施)において、VFD(調整平均±標準誤差)は、シベレスタットナトリウム水和物非投与群12.1±1.0日、シベレスタットナトリウム水和物投与群15.7±0.5日であり、シベレスタットナトリウム水和物投与群でVFDは長かった。180日生存率(Kaplan-Meier法)は、シベレスタットナトリウム水和物非投与群56.3%、シベレスタットナトリウム水和物投与群71.8%であり、シベレスタットナトリウム水和物投与群で180日生存率は高かった。VFD、180日生存率のいずれも統計学的に有意差が認められている
12)。
※独立した2つの多施設共同試験からシベレスタットナトリウム水和物投与群384例とシベレスタットナトリウム水和物非投与群172例を集積し、成績は両群間の患者背景の偏りを調整。
(2)高度な慢性呼吸器疾患を合併する患者を対象に実施した製造販売後臨床試験において、シベレスタットナトリウム水和物の使用経験は9例と少なく、有効性及び安全性は確立されていない
13)。[
5.3参照]