第一篇 救急車から見えてきたも の テニスコートに灼熱の太陽が容しゃなく降り注ぐ。夏休みの校庭は、部活動生の掛け声や吹奏楽部が奏でる楽器の音に対抗するせみの声で、一層暑さを増す。そこに突然、緊急事態発生を知らせるサイレンの音が加わった。「救急車だ！大変なことでなければよいが」そう思いながら、人の流れに従ってサイレンの聞こえた方へ駆け寄った。正門前に停められた救急車の周りには緊迫した空気が流れ、慌ただしく救急隊員が動き回っていた。どうやら、野球部員が練習中、誤ってバッティングマシーンに腕を巻き込まれたらしい。後日、幸いにも大事には至らなかったと聞き、ほっとした。 直接的にはいまだ縁がないものの、万一の際に頼りとなる救急車が、近年何かと話題にのぼっている。全国的に出動件数が増加し、今の救急搬送体制を維持することが難しいとして、救急車の有料化が取り沙汰されているためだ。高齢化が進んだことも一因だが、救急車をタクシー代わりに呼んだり、診察を優先してもらえるからといった安易な理由で一一九番する人があまりに多く、本来の目的である一刻を争う患者の搬送に支障をきたしている現実があるという。 そんな話題を前に、か黙な祖父が語った。「日本人は『恥の文化』と言われてきた。色んな見方はあるが、恥を知るということは、自分を客観的に捉えることであり、恥＝思いやり＝想像力だと私は思っている。以前は、近所に迷惑がかかるからと、容易に救急車を呼ぶことはなかった。今は、“税金を払っているから使うが勝ち”とばかりに権利を振りかざす。自分のエゴによって失われる命があることを想像できない人間が増えたことは本当に残念だ。」 四十年という消防生活の中で、多くの人生ドラマを垣間見てきた祖父の言葉だからこそ、ずしりとこたえた。 私は、さっそく自分の町の統計を調べた。救急車の一日当たりの出動回数は平成十九年で、十.六件とあった。合併年の平成十六年は十.五件であり、ここ数年は、ほぼ横ばい状態であることがわかった。救急車の出動にかかる経費は一回につき約四万五千円とも言われており、現在、日本では全額が税金でまかなわれている。その計算からはじき出される経費は、私の町だけでも単純に計算して年間一億七千五百万円という膨大な額にのぼる。そのうち、どの程度不必要な出動と見なされるかの判断は難しいが、祖父の言う「思いやり」で、確実に無駄な税金を抑制することができる。その浮いた税金を、国民が真に必要とする政策に回していく発想と実践こそが、今後の日本社会を支えていく上で、必要なのではないだろうか。 祖父は、最後にこうつけ加えた。「相互扶助の中こそ、税は生きる」のだと。 第二篇 納税者としてのモラル 私の家族は、毎月届く府や市の広報を読む事が好きだ。催し物の面を読み、行きたいものを見つけては足を伸ばす。中学一年生の夏休み、理科の自由研究が上手くいかず、頭を抱えていた時、広報で見つけた自然史博物館での催し物に参加した。学芸員の方々が無料で相談に乗り、助言をしてくださり、実験で必要になった顕微鏡も使わせていただいた。研究がまとまり、ホッとした顔の私に母は、「これも税金があるからできるんだよ。」と言った。 当時はあまり「税金があってこそできる事がある」と言う実感がなかったが、中学校で税金の役割を学ぶ中で、私たちがどれほど税金に囲まれて暮らしているかがわかった。友人たちと歩く道路、大通りには欠かせない信号、足もとのマンホールに電信柱など、通学途中にも税金でつくられたものが多くある。学校は、チョークや黒板だけでなく、音楽室のピアノや技術室の大きな機械、校舎まで、税金のおかげで私たちが使うことのできるものばかりだ。帰り道を照らす街灯や、休日に行く公営美術館、プールなど、一週間で税金のお世話にならない日は一日もない。 こう考えると、税金のありがたさが身にしみるが、最近「私たちが税金を無駄使いしてしまっている」と感じることが多い。学校では消せない落書きだらけの机や、水が出しっぱなしになっている光景、まだまだ使える物が捨てられる瞬間をよく目にする。図書館へ行くと、読みたいページが切り取られたり、個人の勝手なメモ書きをされた本がある。それだけではない。新聞によると、明らかに必要性がないのに救急車を呼んだり、自動車や家電製品のゴミ処理を依頼するとお金がかかるという理由で、山間部に不法投棄する人が増加しているそうだ。 こうした税金の無駄使いは、必ずしっぺ返しが来る。小学生の時、買うお金がないからと、音が出ないオルガンを使い続けた。図書館の新書数は月を追う度に減っている。救急車は本当に必要とする人を助けられず、不法投棄をされた自治体は何日も撤去作業をしなくてはいけないという現実があるそうだ。 私は、納税者としてふさわしいモラルを、国民全員が持つべきだと思う。少子高齢化が進んでいく中で「税金を納めているから何をしてもいい」と言う考えは捨て、「きちんと納めているからこそ、無駄なく使おう」という考えに転換する必要があるだろう。 「この教科書は、これからの日本を担う皆さんへの期待をこめ、国民の税金によって無償で支給されています。大切に使いましょう。」と教科書の裏に記されている。それは私たちに、税金を使うモラルが必要だと教えてくれるようだ。中学校の今からきちんとしたモラルの基に有意義に税金を使い、大人になって税金を気持ち良く納めるだけでなく、未来の担い手たちに納税者として恥ずかしくないモラルを伝えることができる自分でありたい。 第三篇 税金は私たちの「宝」もの 私には年に一回楽しみにしているものがあります。それは一年間の世相を漢字一文字で表すというものです。昨年は食品等の偽装が多かったので「偽」の漢字が選ばれました。税についての作文を書くにあたり、私は税金を漢字一文字で表すとどうなるか考えてみました。まず、父に聞くと給料の明細書をみながら少し考えて「やはり「高」かな」と言っていました。母に聞くと「苦」という答えが返ってきました。友達に聞くと「嫌」の返事でした。税金は高い。税金を払うから生活が苦しくなる。税金を払うことはお金が減るから嫌だ。「高」「苦」「嫌」どれも税金に対してマイナス的にとらえたものばかり。私はびっくりしました。そんなにみんながマイナスに思っているならもうやめてしまえばと思いました。そこで、「もし税金がなくなったらどんな世界になるか」家族で話しました。 まず税金がなくなることで助かることから話し合いました。税金がなくなると給料から税金がひかれないので手取りが増え、自由に使えるお金が増える。消費税がなくなると物価が下がる。など税金を支払わないことで生活しやすくなるというものでした。 では、税金が本当になくなったら困ることはないのでしょうか。家族で話し合う前に私は税金が何に使われているか興味を持ち調べてみました。公立学校の児童、生徒一人当たりの年間教育費は、小学校で八十四万円、中学生で九十四万円、高校生で九十万円が税金で使われています。私には高校生の姉と小学生の妹がいるので、私の家庭だけで年間二百六十八万円も税金が使われていることに驚きました。また、先日祖母が腰が悪くなったので手術をしました。一ヶ月入院したのですが、その際にも国民医療費の公費負担として税金が使われていたのでした。家族もそれぞれ税金がなくなったらどう困るか考えていました。毎週決まった時間にくるゴミ収集車。当たり前のことのように感じているけど、もしゴミ収集車がこなかったら町はゴミにあふれ、衛生的にも悪く疫病がはやります。道路も荒れ放題、図書館などの公共施設もなく、治安も悪くなります。身近な所に税金が使われ、私たちの生活に役にたっています。あまりにも税金が身近に使われているのでそのありがたさに気づいてないように思います。家族と色々話し合っているうちに税金は私たちの生活にとって必要なものだということがわかりました。私たちはもっと税金の使い道に関心をもつ姿勢が必要だと思います。 最後に、税金のイメージを漢字一文字で表すとどうなるか。家族で出した結論は「宝」です。税金はお金から形を変えて、一人一人の生活を安定させ、向上させるもの。まさに現在の宝物。このイメージをみんながもてるようになるといいと思います。 第四篇： 祖父の口癖 私の祖父は長い間、県税事務所に勤めていた。今は八十才をこえて介護施設に入所しているが、私が小学生の頃はまだ元気で、夕食時にテーブルを囲むと決まって言った言葉がある。それは、 「財布の中は宝物だよ。」 という言葉だ。 その頃はまだ意味がわからないままうなずいていたが、ある日介護施設から帰ってきた母が祖父の口癖を話題にした時、私ははっとしたのである。祖父が言っていた財布とは国や県のお財布、つまり一般会計や特別会計であり、宝物とは私たちが納めた税金だから大切に使わなくてはいけないよということだったのである。母が話してくれて、私は祖父が言っていたのはこういうことだったのかと、初めて気がついた。 確かに、国や県の財布はずい分大きなものだろう。そして、その中に入ってくる税金は国や県の収入であり、私たちの暮らしを支える価値のある宝物だ。でもこう考えた時、私は税金についてあまり知らないことに気がついた。そこで、夏休みを利用して図書館の本を借りて読んでみた。 本で調べてみると、税金っていろいろな種類があるのだなと驚いた。納める先で区別すると国税と地方税、納め方によると直接税と間接税にわかれるそうだ。さらに私たちの暮らしのすみずみまで、税金が密接に関わっていることがわかった。私がよく耳にするのは消費税とガソリン税。ところが、自動車税や相続税、法人税や酒税、ゴルフ場利用税まで様々。このあいだ和歌山の方へ家族で出かけたが、そこの温泉に入った時、入湯税を払っていたなんて驚きだ。こうして知ってみると、税金って私たちの暮らしとは切っても切れないものなのだと実感した。 税金は財布から出ると、また形を変えて社会の中へ戻っていく。考えてみれば、祖父がいつも言っていた宝物という言葉、今なら、 「うんうん。」 とうなずける。みんなが出し合った税金は一度大きな財布に集まるが、やがて道路や公園を造るために、福祉や教育のためにと使われる。私たちが私たちのために使う税金。一人一人が自分のできること（税金を納めること）をし、それが私たちの暮らしを支えている。税金を通して、みんながつながっているのである。 税金は、社会全体をつなぐ絆と言っても過言ではない。お金はそれだけで価値があるが、暮らしの土台をしっかり支えるからこそ宝物なのだろう。今の私にとって、祖父の言葉がずっしりと重い。 「財布の中は宝物だよ。」 私もこれからは、祖父の目と心で税金という宝物を考えたい。そして、その宝物を守る一人として、また社会の一員として生きていきたいと思う。 够意思吧，别忘了选为满意答案哈~