ミュージックコロン

最近のお気に入り(2024年vol.13)

最近は寝る前に「魔女狩りのヨーロッパ史」(岩波新書)を読んでます。「魔女狩り」ってよく聞く言葉ですが、実際どのようなものだったのか、意外と知ってるようで知らなかったなと。地域的特色、魔女発見人、サバト、家族からの告発など、興味深い記述が多いです。ぼんやりしていた知識の解像度が上がるのは楽しいですね。



カナダのプチ特集、第2弾。今回は3組ご紹介。



トロントのSSW兼プロデューサー、Charlotte Day Wilsonの新作"Cyan Blue"がソウルフルでいい。"Alpha"(2021年)以来3年ぶりの2ndアルバムはXL Recordingsからのリリース。R&B、フォーキー、ミニマルなエレクトロがブレンドされたサウンドと、翳りのある歌声が魅力的。聴くたびにじんわり染みてくる。






モントリオールのインディー・ポップ・バンドTOPSのヴォーカル、Jane PennyのソロデビューEP"Surfacing"がいい。バンドよりもクリエイティヴ的探求を進めたサウンドで、シンセポップ~アンビエント色濃い作品に仕上がっている(ベルリンとモントリオールで制作されているのもポイント)。彼女の奏でるフルートが心地よく響く曲も聴きもの。







Jane Pennyと同じくTOPSのメンバー(キーボード担当)、Marta Cikojevicによるソロ・プロジェクトMarciもいい。アルバムは"Marci"(2022年)以降リリースされてないけど、去年出た2枚のシングルがともにダンサブルでキャッチー。早くフルアルバムが聴きたいところ。






以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。


最近のお気に入り(2024年vol.12)

妹家族が潮干狩りに行ったらしく、アサリをたくさん持って来てくれました。みそ汁や酒蒸しなどで食べるのが楽しみです。



カナダのお気に入り新作がたまってきたんで、数回にわたりプチ特集的にアップします。今回はフォーキーな2組をご紹介。The Band、Neil Young、Joni Mitchellといったカナダ出身のアーティストたちが僕の音楽的趣向のベースを形作ったと言っても過言ではないため、いつもどこかでカナダの音楽を気にしている自分がいます。



ブリティッシュコロンビアに拠点をおくバンドLovingの2ndアルバム"Any Light"がとてもいい。"If I Am Only My Thoughts"(2020年)以来4年ぶりの今作も、素晴らしいサイケフォークに仕上がっている。フォーキーでドリーミー、儚くて優しい。音の印象は違うけど、どこかThe Bandを彷彿させる瞬間もあって、すっかり愛聴してます。たゆたうような心地よさに酔いしれる好盤。







Jonah Yano(広島県出身で現在はモントリオールに拠点をおくSSW)とLe Ren(モントリオールに拠点をおくSSW、Lauren Spearのソロプロジェクト)のデュオによるEP"the little italy demos"がとてもよい。Jonah Yanoは前作"Portrait Of A Dog"(2023年)を年間ベストアルバムにランクインさせたが(こちら参照)、その後様々なアーティストとコラボしているようだ。Le Renとは前作のレコーディング後、一緒に曲を書き始めたらしい。今では2人は同じ壁を共有している隣人とのこと。静謐を湛える佳作。ぜひ一枚アルバム作ってほしい。







以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。


最近のお気に入り(2024年vol.11)

裏の畑に植える夏野菜の苗を買いに行きました。ナス、キュウリ、トマト、ピーマン、ゴーヤ、オクラ。採れたての野菜を食べるのが今から楽しみです。



Jimmy Montagueの新作"Tomorrow's Coffee"がとてもいい。たまたまSpotifyのオススメに上がってきたのを聴いてみたところ、こういうのが聴きたかった!というグッドミュージックだった。NYクイーンズのSSWでTaking Medsというインディパンクバンドのベーシスト、James Palkoのソロプロジェクトらしい。

今作は"Casual Use"(2021年)以来、3年ぶり3枚目のソロアルバム。過去作も遡って聴いてみたけど、どれもいい。パンク周辺は門外漢につき、どういう位置付けの人なのかはよく分からないけど、New York DollsのDavid JohansenがBuster Poindexter名義でリリースした諸作をふと思い出した(今作にはBuster Poindexterほどのジャズ~カリビアン色はないけど)。

全編通して小粋で、ほどよくジャジー、ほどよくボッサ、ほどよくポップ、ほどよくブルージー。ホーンセクションも入って、とてもいい感じで。すっかり愛聴してます。今年のグッドミュージック大賞候補の筆頭に。

現時点でフィジカルリリースはされていない様子。ただ今後、前作とのカップリングで2枚組LPがリリースされるらしき情報も(こちら参照)。もしリリースされたら、これは絶対買い。ちなみにBandcampでは、タイトルにちなんだコーヒー豆も売ってました(こちら参照。既に売切れ)。








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最近のお気に入り(2024年vol.10)

近所の小学校の横を歩いていたら、色鮮やかなツツジの花に目が留まりました。教室の方からは「春の小川」の合唱が聞こえてきて、澄んだ歌声に心洗われました。



Dent Mayの新作"What's For Breakfast?"がポップでサイコー。"Late Checkout"(2020年)以来、4年ぶり6枚目のアルバム。いいメロディに心地よいサウンド、相変わらず冴え渡るポップ職人の技。

あまり彼のイメージにないようなギターロックが収録されていて、もちろんそれも悪くはないけど、「長生きして、いい曲をたくさん書くのが目標」という彼らしいポップな曲がやっぱり耳に残る(AORテイスト、ポップソウル、Beach BoysやAlan Parsons Projectを彷彿させるナンバーなど)。Pearl&The OystersやJordanaといったインディポップ周辺の人気者がゲスト参加している曲もあり、センスある人選に賛同(どちらもいい曲)。

全体的に夏向きの曲が多く、これからの季節にピッタリかと。ソウルミュージックが好きなんだろうなと思えるところに、とても好感が持てる。ぜひ長生きして、いい曲をたくさん書いてほしい。









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最近のお気に入り(2024年vol.9)

いつ植えたのか定かではないのですが、春になると裏の畑にふきが生えてきます。しばらくの間、ほろ苦い旬の味覚を楽しめます。今年は間に合いませんでしたが、来春こそ、ふきのとうを天ぷらにして食べたいと思ってます。



NYブルックリンに拠点をおくSSW、Sam OwensによるプロジェクトSam Evianがポップでいい。4枚目のソロアルバム"Plunge"が自身のレーベルFlying Cloud Recordingsからリリースされた(Thirty Tigers経由)。以前はCelestial Shoreのフロントマンとして活動していたが、近年はソロとエンジニア(Big Thief、Cass McCombs、Kate Bollingerなど)としての活動が多いようだ。

パワーポップ、グラム、サイケなど、60~70年代の色合いが濃いアルバムに仕上がっている。The Beatlesのドキュメンタリー"Get Back"を観てから制作したとのことで、The Beatlesはもちろん、メンバーのソロ作、およびその影響下にあるミュージシャンたち(Emitt RhodesやHarry Nilsson、最近だとThe Lemon Twigsあたり)を彷彿させる曲が並ぶ。個人的には、時折The BandやGram Parsonsが顔を出したりするところも◎。

前回アップしたAdrianne Lenker参加曲もあり。その縁でと思われるが、彼女のアルバムの共同プロデューサーであるPhil Weinrobeも2曲でエンジニアとして参加。ゆったりした曲もパワーポップも、このところの暖かい気候にフィットし、とても心地よく聴こえる。快作。








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最近のお気に入り(2024年vol.8)

ある朝、近所の方から筍をいただきました。続けて別の方からは筍ご飯をいただき、まさに今が旬だなぁと。その日は筍づくし、春の恵みを堪能しました。



USインディーを代表するバンドBig Thiefのヴォーカル/ギター、Adrianne Lenkerのソロアルバム"Bright Future"が素晴らしい。"songs and instrumentals"(2020年)以来4年ぶりとなるアルバムで、引き続きPhilip Weinrobeとの共同プロデュース。リリースは4ADから。

森の中のスタジオにアナログ機材を持ち込み、信頼のおける友人たち(Nick Hakim, Mat Davidson, Josefin Runsteen)とのセッションをレコーディング。デモテープのような生々しさがパッケージされており、その空気感に惹き込まれてしまう。ボブ・ディラン&ザ・バンドの「地下室」がふと頭によぎる瞬間もあるが、全体の印象はもっと密やか。フォークやカントリーを基調としつつ、どこかUKフォーク/トラッドのような感触も。Big Thiefの楽曲"Vampire Empire"の興味深いカヴァーもあり(初期ディランを彷彿させる雰囲気)。

最初は地味かなと思ったものの、ドキュメント的な楽しみ方もでき、聴くたびに味わいを増すアルバム。奏でられる音のひとつひとつにじっくり向き合いたい傑作。








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最近のお気に入り(2024年vol.7)

買い物に出かける途中、駅の近くの桜並木が満開でした。束の間の花見気分を味わいました。



アラバマ州出身で現在はミズーリ州カンザスシティに拠点をおくSSW、Katie CrutchfieldのプロジェクトWaxahatcheeがいい。"Saint Cloud"(2020年)以来、4年ぶりの新作となる"Tigers Blood"が先月ANTI-からリリースされた。

前回アップしたHurray For The Riff Raff同様、プロデュースはBrad Cook。ギターにMJ Lenderman(Wednesdayのギタリスト。ソロでも活躍)、ドラムにSpencer Tweedy(WilcoのJeff Tweedyの息子)が参加。特に先行シングル"Right Back To It"で聴かせるゆったりしたレイドバック感が出色かと(Phil Cookのバンジョーが印象的。MJ Lendermanのコーラスも絶妙)。あとByrds(またはR.E.M.)みたいな"Crowbar"もオススメ。

全体的にフォーク、カントリー、ブルーグラスに根差したルーツロック(若干オルタナ風味)が多い印象。アメリカーナ/アメリカンロック好きの方はぜひ。







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最近のお気に入り(2024年vol.6)

近所にある幼稚園の桜がちらほら咲いてました。数日のうちに満開になるかもしれません。



ニューヨーク・ブロンクス出身(プエルトリコにルーツを持つ叔父夫妻に育てられた)でニューオリンズに拠点をおくSSW、Alynda SegarraのプロジェクトHurray For The Riff Raffが素晴らしい。この9thアルバム"The Past Is Still Alive"がNonesuch移籍後第2弾。フォーキーでカントリー、アメリカーナど真ん中と言っても過言ではない良作。

レコーディングの1ヶ月前に父親を亡くすという辛い時期に制作され、彼女曰く「時間、記憶、愛、そして喪失と格闘するアルバム」になったとのこと。ポップでありつつ、確かな手応えを感じる作品に仕上がっている。ドライヴ感あるカントリーロックは快調だし、フォーキーでメランコリックなバラードがまた沁みる。ツボを押さえたプロデュースはBrad Cook(Bon Iver、Waxahatchee、Whitney、Snail Mailなど手がけるキーパーソン)によるもの。

Lucinda WilliamsやSheryl Crowを彷彿させたり、Ry Cooderや久保田麻琴と夕焼け楽団に通じる曲もあって、ルーツミュージック好きには抗えない魅力あり。特にConor Oberst(Bright Eyes、Better Oblivion Community Centerなど)とデュエットしているカントリーワルツ"The World Is Dangerous"から、ペダルスティールとホーンが印象的な"Ogallala"への流れが素晴らしく、アルバムのハイライトとなっている。

ヴェンダースの映画のワンシーンみたいなジャケもカッコイイ(写真はTommy Khaによるもの)。今夏、Norah Jonesとアメリカ西海岸ツアーに出るようだし、これから更に多くの人に聴かれるのではないだろうか。Nonesuchのサイトに本作は「回想録であると同時にロードマップでもある」との記載が。今まで来た道を振り返りながら、これから新たな一歩を踏み出していく。そんな決意と希望を感じさせるところも。個人的に年間ベストアルバム候補の一枚。








今年はカントリーテイストの新譜にいいものが多い印象。また近いうちにアップできればと思います。

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最近のお気に入り(2024年vol.5)

親戚の子がこの春から新入生になるという話を複数聞き、僕もフレッシュな気分になりました。



アトランタ出身のSSW、Faye Websterの新譜"Underdressed At The Symphony"がリリースされた。5thアルバムとなる今回もすごくいい感じに仕上がっている。

彼女の奏でる音楽は、カントリーテイストのインディーロックを軸にしながら、フォーキー、サイケデリック、R&Bなどがブレンドされている。今作でもMatt “Pistol” Stoesselのペダルスティールが心地よく響き、彼女の音楽の特色である、たゆたうような浮遊感を演出している。

今作ではWilcoのギタリストNels Clineが参加しているのも大きな聴きもの。彼の変幻自在なプレイはやはり素晴らしい。他には同郷の同級生Lil Yachtyのラップがフィーチャーされた曲もあって、バラエティに富んだアルバムとなっている。

たゆたうような上モノが印象的だけど、するりと流れ過ぎていかないビート感のようなものも同時に感じられる。そこはやはりヒップホップやR&Bが盛んな街、アトランタという土地柄なのかもしれない。








今年は新譜が豊作ですね。また近いうちにアップできればと思います。

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最近のお気に入り(2024年vol.4)

昨日は裏の畑の甘夏を収穫。一本の樹から150個ほどの実が取れました。見た感じはそんなに多いと思わなかったんですが、意外となっててビックリしました。



ニューオリンズからナッシュヴィルへ。アメリカーナ新星、旅のはじまり。

ルイジアナ州バトンルージュ生まれでニューオリンズに拠点をおく新人SSW、Brittiが最近のお気に入り。文字通り挨拶代わりのデビューアルバム"Hello, I'm Britti."は、The Black KeysのフロントマンDan Auerbach(以下DA)プロデュース&共作の充実作。

大学卒業後、ニューオリンズの楽器店で働いていた彼女は、特に自らアクションを起こすことなく、歌手になるという夢の実現を先延ばしにしていた。恋人との別れやコロナ禍での一時帰休を機に一念発起し、週に1本以上のペースで自身が歌っている動画をアップし始めた。なかなか思い通りの反応がない中、お気に入りであるDAの"Whispered Words (Pretty Lies)"のカヴァーをアップしたところ、何とDA本人に見出され連絡が来た。その後DAのスタジオのあるナッシュヴィルに飛び、一緒に曲を作りレコーディングすることに。デビューに至る経緯はざっとこんな感じ。

彼女の豊かな音楽的バックグラウンドが生かされているアルバムは捨て曲なし。R&B(STAXっぽいサザンソウルやモータウンなど)やカントリーを軸にしつつ、ジャジーなレゲエもあり。マニアックなディープさよりも、開かれたポップさが印象に残る。いい意味での聴きやすさが彼女の魅力かと。

本作を聴いて思い出したのは、R&Bとカントリーの橋渡し的役割を果たした名作コンピレーション"Rhythm, Country & Blues"(1994年)や、Dusty Springfieldの傑作"Dusty In Memphis"(1969年)。あと紫系のジャケつながりで、Easy Eye Soundのレーベルメイト、同じくDAプロデュースのYola("Dancing Away In Tears"は名曲)。ジャンルを横断した活躍の予感もする彼女、今後注目していきたい。








今年は新譜が豊作ですね。また近いうちにアップできればと思います。

以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。