矢を引き抜く『ヴェルサイユのディアナ』

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かつてヴェルサイユ宮殿に置かれていた女神像『ヴェルサイユのディアナ』(または『ヴェルサイユのアルテミス』)をご紹介します。

『ヴェルサイユのディアナ』( Diane de Versailles ) 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵
『ヴェルサイユのディアナ』( Diane de Versailles ) 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵
目次

『ヴェルサイユのディアナ』( Diane de Versailles ) 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵

『ヴェルサイユのディアナ』( Diane de Versailles ) 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵
『ヴェルサイユのディアナ』 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵

引用元:『ヴェルサイユのディアナ』 Shonagon

ルーヴル美術館公式サイト

「獲物発見!」

お供の鹿をつれた女神の狩りの場面です。

1556年に時の教皇からこの像を贈られたのは、フランス王アンリ2世でした。

アンリ2世の寵姫はディアーヌ・ド・ポワチエ( Diane de Poitiers, 1499年-1566年)といい、女神ディアナの名とかけていた?ようです。(書籍によっては「アルテミス」となっていると思いますが、ギリシャ神話のアルテミスとローマ神話のディアナは同一視されます)

ディアーヌ・ド・ポワチエ 1525年 ジャン・クルーエ コンデ美術館蔵
ディアーヌ・ド・ポワチエ 1525年 ジャン・クルーエ コンデ美術館蔵

引用元:ディアーヌ・ド・ポワチエ

女神像はフォンテーヌブロー城に飾られました。

1602年国王アンリ4世がこの像をルーヴル宮殿に移し、1696年にルイ14世によってヴェルサイユ宮殿の鏡の間に設置。

このことから本作は「「ヴェルサイユの」ディアナ」と呼ばれます。

『狩りの女神ディアナ』( Diane chasseresse ) 1550年代 フォンテーヌブロー派

アンリ2世の愛人ディアーヌがモデルとされる、フォンテーヌブロー派の『狩りの女神ディアナ』です。

『狩りの女神ディアナ』 1550年代 フォンテーヌブロー派 ルーヴル美術館蔵
『狩りの女神ディアナ』 1550年代 フォンテーヌブロー派 ルーヴル美術館蔵

引用元:『狩りの女神ディアナ』

『ディアナの噴水』( Diane appuyée sur un cerf ) 16世紀

こちらも鹿と一緒の女神ディアナ。

アンリ2世がディアーヌのために建てたアネ城の噴水彫刻です。

『ディアナの噴水』 16世紀 ルーヴル美術館蔵
『ディアナの噴水』 16世紀 ルーヴル美術館蔵

引用元:『ディアナの噴水』 Nathanael Burton CC-BY-SA-2.0

ルーヴル美術館公式サイト

『ディアナの噴水』( Diane appuyée sur un cerf )

展示場所:リシュリュー翼、241展示室

シュリー翼603展示室でブロンズ製の『ヴェルサイユのディアナ』が見られます

レオカレスの作品『ベルヴェデーレのアポロン』

『ヴェルサイユのディアナ』のオリジナルは青銅製。

作者は紀元前4世紀頃の古代ギリシャの彫刻家、レオカレス( Leochares )と言われています。

『ベルヴェデーレのアポロン』もレオカレスの作品と言われています。

ベルヴェデーレのアポロン 紀元前130年頃と140年頃の間 ヴァチカン美術館蔵
ベルヴェデーレのアポロン 2世紀頃のローマン・コピー ヴァチカン美術館蔵

引用元:ベルヴェデーレのアポロン Livioandronico2013 CC-BY-SA-4.0

『ヴェルサイユのディアナ』の「キトン」

『ヴェルサイユのディアナ』( Diane de Versailles ) 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵
『ヴェルサイユのディアナ』 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵

引用元:『ヴェルサイユのディアナ』 Flickr images reviewed by FlickreviewR 2 CC-BY-2.0

森を駆け巡る凛々しい女神。

ミニスカートが印象的です。

『ヴェルサイユのディアナ』( Diane de Versailles ) 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵
『ヴェルサイユのディアナ』 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵

引用元:『ヴェルサイユのディアナ』 Marie-Lan Nguyen (2007)

『ヴェルサイユのディアナ』( Diane de Versailles ) 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵
『ヴェルサイユのディアナ』 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵

引用元:『ヴェルサイユのディアナ』 Marie-Lan Nguyen (2010) CC-BY-3.0

『ヴェルサイユのディアナ』( Diane de Versailles ) 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵
『ヴェルサイユのディアナ』 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵

引用元:『ヴェルサイユのディアナ』 Jastrow (2007)

『ヴェルサイユのディアナ』( Diane de Versailles ) 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵
『ヴェルサイユのディアナ』 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵

引用元:『ヴェルサイユのディアナ』 Jastrow (2007)

『ヴェルサイユのディアナ』( Diane de Versailles ) 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵
『ヴェルサイユのディアナ』 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵

引用元:『ヴェルサイユのディアナ』 https://www.flickr.com/photos/8283439@N04/16906184195/ Amaury Laporte CC-BY-2.0

女神の衣服は古代ギリシャの人々が着ていたキトン(χιτών)です。(ルーヴル美術館の解説欄には「 chitôn 」。英語の綴りは「 chiton 」)

キトンは「ドーリア式」と「イオニア式」に分けられます。

ドーリア式キトン(ぺプロス)は、ウールまたはリネンの大きな一枚布で身体に巻き付けて着ます。

脇は縫わず、開いた状態。

肩はブローチで留めます。

ウエストは紐で締め、丈を調節しました。

軍人や猟師たちは丈を短くしていましたが、儀式の際は男性も長いキトンを纏いました。

女性の場合は大抵足首まで長さがあったそうです。

ドーリア式キトンの着方 Carl Heinrich Stratz (1858–1924)
ドーリア式キトンの着方 Carl Heinrich Stratz (1858–1924)

引用元:ドーリア式キトンの着方

『世界服飾史』(美術出版社)から一部引用しますと、ドーリア人が着た典型的なピプロスについて、

およそ肘から肘の長さの二倍の布を二つ折りにして体をはさみ, 肩をピンで留める. 布の上端は折り返され, その上から腰で帯を締める. 左腕の下では布が輪になり, 右腕の側では折り返しが切ったままになる, という衣服である.

深井晃子(監修). 『世界服飾史』. 2010-4-15. 増補新装初版. 美術出版社. p.15.

と書かれています。着方をイメージし易いですね。

また、ディアナはキトンの上に、「ヒマティオン」という上着(マント)も身に着けています。(ルーヴル美術館の解説欄には「 himation 」、英語の綴りも「 himation 」)。

ヒマティオンは厚手のウールでできた長方形の布で、古代ローマで着られたトーガ(トガ)の原型になりました。

狩猟などでは丈が短いものを用いたそうです。

『ヴェルサイユのディアナ』( Diane de Versailles ) 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵
『ヴェルサイユのディアナ』 125年-150年頃 ルーヴル美術館蔵

引用元:『ヴェルサイユのディアナ』 Uploaded by Marcus Cyron Photographs by Carole CC-BY-SA-2.0

勢いのある襞の流れが良いですね。現代でも違和感なく着用できそうです。

『世界服飾史のすべてがわかる本』(ナツメ社)では一枚布を折り返して着用する様子、キトンの肩を留める「フィビュラ」と呼ばれるブローチも見ることができます。ヒマティオンについても解説があります。

『ヴェルサイユのディアナ』が展示されているシュリー翼348展示室では、『ヘルマフロディトゥス像』『ヴィーナスとエロス』『三美神』などのボルケーゼ・コレクションの古代彫刻を見ることができます。

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