先行するAIポケットデバイスに否定的評価続く中、会議支援特化の「Limitless Pendant」が注目集める

「Limitless Pendant」
Image credit: Limitless

最近、「スマホをディスラプトする」AI デバイスとして話題になった「Rabbit R1」や「Humane AI Pin」だが、続々とレビューが寄せられる中には否定的な意見も多く、「スマホに取って代わる」という発想は、現時点ではまだ理想が高すぎるという意見も多い。

にもかかわらず、AI ハードウェアの争いに参入しようとしているスタートアップはまだ他にもある。Limitless は AI ウェアラブルデバイス「Limitless Pendant」を8月に発売すると発表した。

多機能AIデバイスを発売した R1や AI Pin とは異なり、Limitless はミーティングアシスタントという単一のソリューションに集中することを選択した。

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複数のアプリとデータ連携、周囲の音をフィルタリングして会話を抽出

Limitless Pendant は、首からぶら下げたり、衣服に取り付けたりできる丸いデバイスで、上部にマイクがあり、リアルの会議や日常生活でユーザが聞いたすべての音を拾い上げ、AI を使ってユーザが会話を記憶し、理解するのを助けることができる。

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Limitless はユーザの「外部記憶」となり、こうした記憶を記録してくれるため、ユーザは気が散ることなく会議に集中できる。

しかし、既存の書き起こしアプリケーションや言語モデルの多くも、同じようなことができる。では、Limitlessは何が違うのだろうか?

Limitlessは、会議が始まる前に、ユーザのメールボックス、カレンダー、過去の会話データを連携でき、ユーザが今日の会議の重要なポイントを事前に整理するのに役立つ。さらに、このデバイスはビームフォーミング技術を使って周囲の音をフィルタリングし、参加者の音声を取り込むことができる。

Image credit: Limitless

Limitless Pendant は現在99米ドルで先行販売されており、2024年8月に正式に発売される予定だ。Limitless アプリには無料版と有料版があり、無料版では無制限の音声保存と、書き起こし、要約、メモ取りなど月10時間の AI 機能が利用でき、有料版では月29米ドルまたは年19米ドルで無制限のAI機能が利用できる。

暗号化クラウドとユーザ同意機能

Limitless(旧名 Rewind)の創業者 Dan Siroker 氏は、聴力を失った後に補聴器をつけ始めた。

超能力を手に入れたようなものだ。(Siroker 氏)

Dan Siroker 氏

彼はテクノロジーによって「超能力」を誰もが使えるようにしたいと考え、Rewind を設立した。

Rewind はまた、「外部記憶」の概念を利用し、ユーザが個人のデバイスで過去に閲覧したものを検索で見つけられるようにする。生成 AI の発展に伴い、Rewind チームは AI をより深く製品に取り入れることを決意し Limitless 製品を拡張、社名も Limitless に変更した。

Limitless は、これまでの Rewind のサポートは続けるが、新機能の開発は現時点では優先事項ではないと述べている。Rewindの公式サイトによると、同社は a16z、First Round Capital、NEAなどの投資家から3,300万米ドル以上の資金調達に成功している。現在、新たな資金調達は計画していない。

Rewind がローカルデバイス上の個人記録にしかアクセスできないのに対し、Limitless は暗号化されたクラウドにデータを保存し、ユーザはどこからでもアクセスできる。

従来のクラウドと比べ、雇用主、ソフトウェアベンダである我々はもとより、たとえ召喚状を受け取ったとしても、政府さえユーザの許可なくデータを解読することはできない。(Siroker 氏)

プライバシーを保護するため、Limitless の製品には「ユーザ同意機能」が組み込まれており、デバイスが新しい音声を検出した場合、ユーザが録音に同意を示さない限り、会話を録音しない。

数少ないことにベストを尽くすのが市場開拓のカギ?

R1 も AI Pin も、タクシーを呼ぶ、株式市況を尋ねるなど、日常生活におけるユーザのニーズを AI デバイスで満たすと主張している。しかし、この2つの製品については、否定的なレビューや評価が多い。

テック系 YouTuber として有名な Marques Brownlee 氏は、AI Pin のレビュー動画で、動作が遅く、バッテリーの持ちが不十分で、AI 機能の精度も良くないとし、「これまでレビューした中で最悪の製品」だと述べている。また、Android Authority は、R1は「単なる Android アプリ」であり、他の携帯電話にも APK としてインストールできると批判している

The Verge とのインタビューで、Siroker 氏は Limitless を現在利用可能な幅広い AI ツールとは一線を画し、「機能の多様性や深さを追求するのではなく、ほんの一握りのタスクでベストを尽くそうとしている」と語った。

Siroker 氏は、当初は、世の中の仕事の多くが会議を中心に展開されると考えており、まず会議ソリューションをターゲットにすることを選択した。価格が699米ドルの AI Pin や199米ドルの R1と比べると、Limitless は比較的低価格であるため、より多くの人が購入するかもしれない。

私たちのプログラムは、クールなハードウェアや実現不可能な SF ドリームを中心に据えたものではない。会議の準備は、最もエキサイティングな AI の話ではないかもしれないが、効果的な戦略であり、私たちの市場を切り拓く鍵になるかもしれない。(Siroker 氏)

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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