s-20240122 選挙へ行こう





◉TBSテレビ 2024年5月19日(日) 06:00 新田晃一
「政権交代」は夢か現実か? 追い風の立憲民主党に立ちはだかる「2つの壁」

4月に行われた3つの衆議院補欠選挙で全勝した立憲民主党。報道各社の世論調査でも政権交代を望む声が日増しに高まるなど、結党以来、最大の追い風が吹いている。果たして本当に政権交代は可能なのだろうか?来るべき衆院選に向けて課題は山積したままだ。

結党以来の追い風に浮き足立つ党内

「立憲民主党の役割が非常に大きくなっている。安定政権作りに向けて努力をしていきたい(泉代表・定例会見 5月13日)」

補選での勝利後、立憲の幹部からは“政権交代”を意識した言葉が繰り返されている。「1年前までは政権交代なんておこがましくて口が裂けても言えなかった(立憲・幹部)」状況から考えれば、党内の雰囲気は一変している。

「自分たちが思っている以上に何か大きな変化が起きているかも知れない(立憲・関係者)」

他の野党議員からは「浮かれている(維新・若手)」と揶揄されるほど、党内には追い風ムードが漂っている。

政権交代には足りない支持率

実際、政権交代は起こりえるのだろうか。過去に政権交代が起きた際のJNN世論調査を調べてみた。上のグラフは政権交代が起こった2009年の、自民党と民主党(当時)の政党支持率の推移だ。両党の支持率が拮抗する状況が続いていたことがわかる。これに比べ、5月に行ったJNNの世論調査では、自民の支持率が23.4%なのに対し、立憲の支持率は10.2%。数字上は政権交代がほど遠いのが現状だ。

岸田内閣の支持率が低迷しているにも関わらず、立憲の支持率が上がらないことについて、ある立憲幹部は「“悪夢の民主党政権”というフレーズがいまだに効いている」とぼやく。「国民が立憲の政権担当能力に懐疑的である状況を解消できていない」との分析だが、これに対する特効薬を見つけられずにいる。

政権交代には足りない候補者数
さらなる問題も立ちはだかる。

次期衆院選での過半数ラインは233議席だが、現在、立憲が小選挙区で擁立している候補者数は178人(比例単独1人を除く)にとどまっている。200人を擁立する目標を打ち立ててはいるものの、仮に全ての選挙区で勝利したとしても、立憲単独での政権交代は不可能だ。

立憲は目標を上方修正したい考えだが、一方で候補者を擁立すればするほど、あるジレンマに陥ってしまう。

現在、野党各党は全国各地の選挙区で候補者の擁立を進めていて、すでに野党同士の競合が多発している。今後、立憲が候補者擁立をさらに進めた場合、こうした競合区が増えることは予想されうる事態だ。無論、立憲から一方的に「ウチの方が勝ち目があるから、おたくの候補者をおろしてくれ」などという交渉を行うわけにもいかず、今よりもハードな候補者調整が求められることになるのだ。

立憲が単独過半数を獲得できるだけの候補者を擁立できない場合、他党との連立政権を目指すことになるが、これも見通せていない。泉代表は去年、共通した政策のもとに政党が集う「ミッション型内閣」を突如として打ち出したが、他の野党からは冷ややかな目で見られたままで、この構想も宙に浮いたままだ。

頼みは内閣支持率の低迷?

それに、内閣支持率がこのまま低迷する保証などないことは言うまでもない。一方で、逆に内閣支持率がさらに低下し、岸田総理が解散を打てずに退陣に追い込まれることは、「最悪なシナリオ(立憲・中堅)」なのだと言う。

これには苦い経験がある。

2021年、菅政権(当時)が新型コロナの対応に苦戦していたことから、立憲はこの年の衆院選で躍進するとみられていたが、菅総理が解散する前に退陣したことで状況は一転。その後行われた自民党総裁選で勝利した岸田氏が総理大臣に就任し、いわゆる“ご祝儀相場”と呼ばれる高支持率の状態で解散に踏み切ったため、立憲はあえなく惨敗した。

こうした経験から、もし、岸田総理に代わって国民からの人気が高い石破茂元幹事長が総理になったら―。上川陽子外務大臣が初の女性総理となって一世を風靡したら―。冗談か本気か、党内からは「岸田総理をあまり追い詰めすぎてはダメだ(立憲・幹部)」との声すら聞こえてくるが、一方でそれは自民党の政治状況に依存するという党の体質から脱却できていないことの証左だと指摘する声もある。

“野党政権”望む声に・・・
しかし、それでも野党による政権交代を望む国民の声は膨らみつつある。
JNNが5月に行った世論調査では、次期衆院選について「立憲などによる政権交代をのぞむ」が前回の調査よりも6ポイント増えて48%に。これは、「自公政権の継続をのぞむ」よりも14ポイント高い。

立憲の幹部が「政権交代」を繰り返し口にするのも、こうした国民の声を背景に、党内の士気を高めるのと同時に、国民全体に政権交代の機運を醸成することが狙いだとみられる。

「今の政治情勢は党の地力によるものではなく、あくまで自民党の“敵失”によるものなのは、誰でもわかっていることでしょ(立憲・関係者)」

それを踏まえた上である幹部はこう言った。
「今、政権交代を目指さなくていつ目指すんだ」
政権交代―。立憲は今、結党以来の追い風と共に、最大の試練を迎えている。

TBSテレビ 野党キャップ 新田晃一




 当 ブ ロ グ へ の 皆 様 の ご 支 援 に 深 く 感 謝 致 し ま す!
 ありがとうございます!!  にほんブログ村 ニュースブログ 時事ニュースへ にほんブログ村 (ポチッ)