中国の帰化選手、帰化事情など|ZZ
見出し画像

中国の帰化選手、帰化事情など

◾️概況

昨年来のW杯アジア予選、アジアカップ、U23アジアカップ、、アジアサッカーの潮流として「帰化選手」がトレンドになっている。

3月のW杯アジア予選第4節、合計17試合。各国合計延べ123名の帰化選手が出場。
1試合平均7人、うち85人が先発。彼らは21得点11アシストに絡んだ。6試合は帰化選手が勝負を決めたといえる。例えばキルギス5-1中華台北の一戦、キルギスの5点は全て帰化選手、ガーナ出身FWコジョはハットトリックを決めた。

2024アジアカップ、各国の帰化・二重国籍選手について

ベトナムの状況

主にイラク、シリアといった西アジア勢の北欧出身者。そしてインドネシアのオランダ出身者が大きな影響を与えている。

??「人口2億超のインドネシア、数千万規模の西アジア諸国でもこれだけ人材がいるなら、
14億の中国人はもっと人材がいるのではないか??
ということで、過去に中国へ帰化した選手、または今後帰化が期待される選手を纏めてみた。

なお2019年にも同じ視点で記事を書いてるのでご参考

■帰化済、中国代表入りした選手


前回記事前後から、多くの外国出身者が中国国籍取得し中国代表入りした。
なお中国では大きく「血縁帰化」と「非血縁帰化」に分かれる。
前者は3代以内(少なくとも祖父母の誰か)中国系のルーツを持つ選手、後者はそうでない選手。

(*付きは、国籍取得したが中国代表でプレイしなかったORまだしてない選手)

★「血縁帰化」

・MF李可(Nico Yenaris)
93年英国・ロンドン出身、2世。アーセナルの下部組織出身でイングランド年代別代表歴。父がキプロス人/母が中国人。イングランドの1部や2部へて、中国協会に見つかり19年中国籍取得&現北京国安に。怪我などで欠場がちだが、万全なら代表でも守備的MFのスタメン候補。

・DF蒋光太(Tyias Browning)94年英国・リバプール出身、3世。エバートンの下部組織出身でイングランド年代別代表歴あり。祖父が広東省出身で英国へ移住。19年中国国籍取得、21年代表デビュー。現上海海港。今や中国代表と上海海港のディフェンスリーダー。

・MF楊明洋(Yang Mingyang)
95年スイス・バーゼル出身、2世。スイス年代別代表歴あり。スイス、イングランド、スペイン下部経て21年から南通支雲へ。ボランチ、暫く2部でプレイおり、南通は強豪でないこともあり代表未招集だが、充分実力はあると思う。父が武漢出身の医者で、スイスの大学で博士&教授とゆうエリート家庭。

・DF王毅(Denny Wang Yi)* 98年イタリア・アルバ出身、2世。ユベントス下部組織出身で、イタリアU17代表招集歴あり。祖父が浙江省からイタリアへ移民し中華料理店を開業したらしい、現武漢三鎮。右サイドだが右MFも対応。

FW德尔加多(Pedro Delgado)*97年ポルトガル出身、3世。祖父が広東省→マカオ→モザンビークへ移民。カボベルデのルーツも。インテル、スポルティングなどへて、18年山東へ加入。19年中国国籍取得。しかしポルトガル代表でU-20ワールドカップ出場しており、また中国滞在が5年満たないため代表入りは25年以降になるとのこと。長く2部にレンタルされていたが、今季漸く山東で戦力になり始めた。

・MF侯永永(John Hou Sæter)*98年ノルウェー出身、2世。名門ローゼンボリで16歳でデビュー。ノルウェー年代別代表でウーデゴーアらとプレイしキャプテンも務めた。
母が河南省出身で、19年中国籍取得し北京国安加入も、怪我がちで4年間25試合出場に留まった。現在はノルウェーに戻り2部でプレイ。若いし期待度高かったが惜しい。でも本人は4年間で2000万元(4億円)稼いだらしい。

・MF蕭涛涛(Roberto Siucho)*97年ペルー・リマ出身、3世。祖父が広東省出身。ペルー年代別代表歴あるウイングで、19年に広州恒大入り。しかし人員過多の恒大でプレイすることはなく、2部レンタルで転々とするがパッとせず。恒大の経営なんもありひっそりペルーへ帰国。22年中国籍を放棄済。何の為に帰化したのか、本人はそこそこ稼いだだろうが


★「非血縁帰化」

・FW艾克森(エウケソン)89年ブラジル出身。ブラジルU23代表歴あり、12年に中国へ渡り広州恒大、上海海港で中国・アジア全土に名をとどろかせたストライカー。
19年満を持して中国代表入りも既に30歳。全盛期の切れは無く、現所属の成都蓉城でもあまり出番なく。もう5年早く帰化できていればどうだったか、、

・FW阿兰(アラン)89年ブラジル・サンパウロ出身。青島西海岸所属。オーストリア・ザルツブルク時代にヨーロッパリーグ得点王。15年中国に渡り、広州恒大や北京国安などで活躍。その後国籍取得し、21年中国代表デビュー。しかし彼も30代峠を過ぎてからの帰化。ブラジル経て24年青島西海岸で再起を図る。

・FW洛国富(アロイージオ) 88年ブラジル出身。14年山東に加入後リーグ得点王を経験したが、期待以上に代表で活躍。カタールW杯予選ではサウジ相手に無双。その能力だけでなく闘争心や献身性もあり帰化組で一番高い評価を得た。だが恒大の経営危機などもあり退団、ブラジルでプレイも既に引退。ブラジル組で一番期待値低いかったが、一番活躍したと思う。

・FW费南多(フェルナンジーニョ)93年ブラジル出身。山東泰山所属。割と小柄だがスピードや突破力に優れたウイング。15年重慶に加入後「バイク」の異名。その後20年に恒大へ加入&中国籍取得も、コロナ禍で試合がなく、また招集されても自身の負傷でデビューが遅れていた。
23年山東加入後復活、24年漸く中国代表デビュー。年齢的にもコンディション的にもまだ貢献できそうだが、彼ももう何年か早く起用できていたら。

・MF高拉特(リカルド・グラール)*引退 ブラジルリーグMVPをひっさげ、広州恒大でACL優勝に貢献。しかし国籍取得後怪我がち&中国滞在歴が5年達して無かったため中国代表入りできず、リハビリ&恒大の経営難、コロナ禍もありブラジルへ帰国し引退。中国籍放棄&ブラジル国籍回復済
報道によれば、中国籍取得後彼の年俸は1500万ユーロに、+多くの帰化による手当で恒大は彼に8億元(160億円)費やしたと言われる。。本人は充分稼いだろうが、本当に無駄な帰化だった。

結局中国代表入りした選手は約半分。蒋光太、李可のように血縁あり&比較的若い選手は成功例といえよう。楊明洋、王毅なども今後の活躍次第で代表入りの可能性充分ある。

一方ブラジル組は艾克森、阿兰、洛国富らいずれも既に30代半ば。相応に貢献したが、3人とも80年代生まれで年齢的にもう厳しい。
93年生まれの费南多は24年に代表デビュー、唯一今後も活躍が期待できる。
高拉特などは莫大なコストかけたが、結局中国代表入りできず、本人はブラジルに帰り中国籍も放棄した。ムダ金


■今後中国代表入り期待される選手

★「血縁帰化」

DFライアン・ラポソ(Ryan Raposo/伍小海) カナダ/ポルトガル 3世
99年カナダ出身。MLSのバンクーバー・ホワイトキャップスのウイングバック。
父がポルトガル人。母方の祖父母が中国からカナダへ移民。
出身国のカナダ、父のポルトガルの代表入りが可能だが、本人も中国代表入りを希望しているとの情報。MLSで主力、年齢的にも本人が前向きな点もあり即戦力候補。

DFクリストファー・チェン(Christopher Cheng/鄭澤彦) ノルウェー 2世
01年ノルウェー出身。父が中国人でノルウェーに移民し、飲食店を経営。
同国トップリーグのSandefjord所属でサイドバックのスタメンを確保。

MFキアン・フィッツジム(Kian Fitz-Jim) オランダ/スリナム 2世
03年オランダ出身、オランダU20代表歴あり。アヤックス所属で今季リーグ2試合出場。主にアヤックス2軍でプレイ。母が香港出身(祖籍は広東省)スリナム国籍も持つ。
ただ本人がオランダ年代別代表入りしている有望株、オランダ代表を目指してるため中国代表への興味はあまりなさそうとの情報。

FWヘスス・ブリギド(Jesusu Brigido) メキシコ 3世
01年生まれ、メキシコU23代表歴あり。今季グアダラハラで9試合1得点。3世

MFライアン・レイテン(Ryan Yang Leijten/楊瑞安) オランダ 2世
03年生まれ、母が中国人。オランダ2部のデン・ボスで今季21試合1得点。

MFテオドル・ク=ディピエトロ(Theodore Ku-DiPietro) アメリカ/イタリア 3世
祖父が中国人。イタリア国籍も保有。MLSのワシントンDC所属。アメリカU23代表歴あり 

MF高宇洋(Ko Takahiro)
98年川崎生まれ。U23日本代表歴あり、現在FC東京所属。
父の高升は元中国代表で2世、しかし生まれも育ちも日本で、中国代表に興味はなさそう。

GK張奥林(Zhang AoLin)
05年大阪生まれ、両親中国人の2世だが日本国籍取得。日本の年代別代表に選出され、日本代表を目指しているよう。
ガンバ大阪でトップチームに昇格済。

★「非血縁帰化」


FWオスカル・マリトゥ(Oscar Maritu) 99年コンゴ民主共和国出身。十代で中国に渡り、18年延辺、19年陝西、20年から滄州雄獅で10番を背負う。決定力はそれほどだが、その高い身体能力に突破力は魅力。まだ若く、中国7年目で代表入りが可能。本人はコンゴ代表に未練があるようだが、待望論が強く、世論や協会の圧力次第でどうなるか・・

■今後の展望、考察

サッカーに限らず、グローバリズムの時代で世界的に移民や二重国籍は珍しくない。否応にも増えていく

ただ中国においては、「血縁帰化」はこれからもあるだろうが、「非血縁帰化」は難しいだろう。ハードルが高い。また「5年以上中国に滞在」の条件があるので、多くの選手が全盛期を過ぎている(オスカルのような若い選手は別だが)、また手続きも煩雑。

過去の非血縁帰化、ブラジル組の項を見て気づく人は気づくだろうが、ほぼ全員恒大が絡んでいる
ブラジル組全員、非血縁組も初期帰化組は殆ど恒大に在籍している。つまり恒大グループが資金を捻出していたのだ。だが既報の通りそれどころでなく、資金源はもうない。

また中国系(華僑)は人数こそ多いが、スポーツより文化・経済・政治面の人材が多いようだ。
華僑が最も多い東南アジア、人口の7割占めるシンガポールや、3割のマレーシアでも代表に中国系は3~5人程度しかいないのだ。欧州諸国でもそれほど期待できない。

ただ、特に先のU-23アジアカップにおけるインドネシア代表の躍進を見て、帰化が特効薬と思ってはいけないだろう。
インドネシアは①二重国籍を認めている(元の国籍を放棄する必要がない)②協会や政府の支援で手続きがとても速い③旧宗主国のオランダに人材が豊富、、 これらのメリットは日本、中国(共に二重国籍不可、資金源もない、まあ日本は別に要らないだろうが・・)など多くの国は無い。マネできない。
ただインドネシアも全員がオランダ出身者ではない、半数以上は自国で育った純インドネシア人だ。
また、U‐23アジアカップ優勝の日本、準優勝だったが大会最強の呼び声高かったウズベキスタン。共に帰化に頼らず、自国の育成で華を咲かせた
最後はやはり純血のソンフンミンや久保建英のような選手を育てなければならないのだろう


ここから先は

0字

¥ 400

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?